明治29年の創業以来、地域の成長・発展をけん引してきた株式会社山形銀行。しかし時代の変化に伴う業務の多様化・複雑化によって、特に行内のグループウェアにおいては、一方的な情報発信が増えてきていることに課題感を持っていました。そのような状況において、同行経営企画部ハイブリッド戦略室の安野氏は、課題解決の方法を模索。モリサワとの縁がつながり、2024年1月、情報発信の機会が多い本部行員を対象とした行内研修「『伝わる』ビジネス資料作成プログラム」の実施に至りました。実際に受講した人事総務部の横尾氏と鈴木氏を交えて、研修の効果やその後の変化についてお話をうかがいました。
伝わる資料づくりから情報発信の意識改革へ
安野氏 「研修の効果としては、まさに研修タイトルのとおり、受け手に伝わる資料が増えました。受講した本部行員を中心に『受け手のことを考えた情報発信』という考え方が徐々に浸透してきていると感じます。
例えば行内グループウェアの掲示板では、これまで多かった文字だけの情報発信が減少し、タイトルが端的な言葉で大きく表現されたものや、写真やイラストが多用されたものが増えています。また、各種会議で使用する資料についても、強調したい部分が図式化されて具体的なポイントが示されるようになりました。対外向けのIR資料にも、研修で教わったテクニックが多く使われています。こうした変化は、ただ単に資料が見やすくなったということだけではなく、情報発信をする側の意識改革につながっていると思います。
そもそも今回の研修をご依頼したのは、『やまがた創生プロジェクト研究※』でモリサワさんが行っていた、情報発信の質向上プログラムを見学したことがきっかけでした。参加されていた企業の方々の資料づくりがめきめきと上達するのを目の当たりにして、“これなら当行の行員が変わるきっかけになるかもしれない”と確信を持ちました。研修後の変化をあらためてみていると、その成果がしっかり表れていると感じます」
※モリサワと山形県山形市・事業構想大学院大学との共同プロジェクト
脱マンネリ資料!『伝わる』ビジネス資料作成プログラム
〜チラシづくり〜
【第1部 講義】
「伝わる」資料づくりに欠かせない、文字・色・図形のバランスや、視認性の高いフォントの選び方といった具体的なテクニックを紹介。
【第2部 ワーク】
課題は「チラシ」のリメイク。
提出された課題にはコメントをつけた「アドバイスシート」を返却し、より深い理解をサポートしました。
研修効果は業務の時短やインシデントの減少にも
安野氏 「研修の内容にあった『見せる情報と読ませる情報 7:3の法則』や、人がものを見るときの『Zの視線』といった伝わる資料づくりのテクニックは、銀行の研修ではまず習うことはありません。そのため受講者からは、“率直に面白かった”“広告デザインなどの訴求の仕組みがわかった”といった感想が多くありました」
横尾氏 「デザインはセンスのある人がするものと思い込んでいたので、まさか自分にできるとは思っていませんでした。けれど、情報と文字数とフォントを精査することや余白を均等にすることなど、私にもできるレイアウトの道筋をわかりやすく教えていただけたので、その後の資料づくりに活かすことができています」
鈴木氏 「私も同じく、デザインに対する意識のハードルが下がりました。それに加えて、部内で同僚が作成した資料に対しても、研修を受けたからこそできるアドバイスが増えたと思います。また最近では、資料をつくってもらう前に構成やレイアウトを一緒に考えているので、お互いの仕事の効率化になっています」
横尾氏 「情報を精査して正しく伝える力が身につくと、外部のデザイナーさんやイラストレーターさんに依頼する際も具体的な発注ができますよね。制作物の精度を高められるだけではなく、作業ロスが減って生産性の向上にもつながると思いました」
鈴木氏 「また研修の形態についても、オンラインではなくリアルで実施して正解でした。学んだことをその場でワークする構成が効果的で、研修という場だからこそできるブラッシュアップがありました。受講者同士の意見交換も活発だったので、オンラインでは実現できない一体感があったと思います」
安野氏 「銀行はいまだに、文章がメインの情報共有文化がありますが、研修を通して『受け手を意識しなければ伝わらない』という気づきを得られたと思います。その結果、行内の情報発信やコミュニケーションが改善され、さまざまな場面におけるインシデントの減少にもつながっています」
1・7・l(エル)・I(アイ)の違い。銀行ならではのフォントに対する意識
研修ではユニバーサルデザインに対応したモリサワの「UD書体」についても紹介し、アンケートを実施しました。研修前にUD書体を知っていた割合は30%程度だったものの、研修後の『UDフォントを業務で活用したいと思いますか?』という質問に対しては、95%以上が「思う」と回答。フォントに対する意識についてもうかがいました。
安野氏 「8年ほど前から、ホームページなどに掲載するニュースリリースやパワーポイント資料などのフォントについては、指定のフォント使用が内規となっています。契約書等のフォーマルな対外文書は現在でも明朝体ですが、それ以外のものは見やすさが重視されています。また、通帳に記載されるフォントも数年前に変更されました。システムの刷新時に文字の認識率が論点に上がり、お客様が見やすいフォントが選定されました。
しかし当時は、フォントが変更された意味について、ほとんどの行員が理解していなかったと思います。今回の研修で改めて、フォントが変わると、見やすさや認識率が変わることを実感しました。特に数字の『1・7』小文字の『l(エル)』大文字の『I(アイ)』の違いには驚きましたね。我々は数字に最も気を使う業種ですから、そこに対する納得感がアンケートに反映されたのだと思います」
情報発信のスキルがブランディングにつながる
安野氏 「山形銀行では2024年度から、第21次長期経営計画がスタートし、『挑戦を楽しむ企業文化を育む』という目標も掲げています。その挑戦という言葉には、新しい業務の創出だけではなく、今回学んだような資料づくりの工夫も含まれています。研修の再実施や通年型への展開なども含めて、今後を考えていきたいと思います」
鈴木氏 「近年では、休日セミナーやワークショップといったかたちでフランクに実施すると、興味のある人が手を挙げる傾向にあります。プレゼンなどの発表資料を対象とした研修を受講したいという意見もあるので、もっと気軽に参加できるような研修も検討していきたいですね」
横尾氏 「インナーブランディングの観点からも、情報発信に関する研修を通した組織のアップデートやレベルアップを期待しています。私たちが研修で学んだようなノウハウを上司が理解できないといった状況を避けるために、幅広い層に同じ知識をもってほしいと思います。社内スタンダードの均一化に、こうした機会が必要だと感じています」
安野氏 「金融商品は、公平性の観点から銀行ごとに極端な違いを打ち出しにくいのが実態です。となれば、私たち行員一人ひとりの個性が重要になっています。ブランディングの確固たる幹があれば、右の枝になるか左の枝になるかは自由にできるので、それぞれが個性を発揮できる組織になるのではと考えています」
相手のことを考えて話す・見せるといった情報発信のスキルは、実は組織の意識統一に貢献し、ひいては組織を強くするブランディングにつながっていきます。そのためモリサワはフォントメーカーの視点から、組織の“らしさ”が従業員全員に正しく伝わるような研修プログラムの開発に注力しています。経営層の考えがきちんと伝われば、内部のコミュニケーションにおいても、外部への情報発信においても、ぶれない組織をつくることができるからです。今後も、山形銀行様の「伝わる」情報発信に注目です。
資料作成研修の詳細(費用・実施までの流れ・受講者の声など)について詳しくご紹介しているページをぜひご覧ください。
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