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2023.02.09

日本語教育現場にも役立つUDフォント
~検証結果・活用事例・無料教材~

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年々、外国人労働者が増えるなか、働く側、受け入れる側の双方が、日本語でのコミュニケーションに不安を抱えるケースは多くあります。さらに教育現場でも、日本語をうまく習得できない子どもがいることが明らかとなっています。日本語教室や日本語教師の不足も社会的課題となっており、メディアでも全国規模の課題として大きく取り上げられました。

2022年12月11日に開催した『多文化共生に向けた日本語教育の支援』では、日本語教育の現状やこれからの課題について、最前線で働く3名の方にご登壇いただきました。ここではその様子をレポートします。

セミナーを見逃した方はこちらから、アーカイブ動画を配信しています。

参加者の声

フォントによってこんなに学習に差がでることに驚きました。明朝体を真似て書くと、実際使用する文字ではないので、不都合が生じることも目から鱗でした。手書きに近い文字がUDデジタル教科書体だと知って、発想がすばらしいなと思いました。

UDフォントの特徴について今回初めて知ることが出来ました。420時間の日本語教師養成講座では教科書体を何の疑問もなく使用していたので、今回新たな角度から日本語を考えることが出来ました。ありがとうございました。

国外で教えていた際、ひらがなのテキストが明朝体だったため、「ふ」や「さ」が手書きとは異なる形状のフォントが使われていて、今回ご紹介があったような形になっていて、全員が全員「ふ」をつなげて書いており、全体に向けて指導したところ、学部の教授がそのように教えたという事実が判明しました。まさにその教授については化石化しており、初めて習う段階でしっかりと教える必要があると強く感じています。

セミナーレポート

初期日本語学習者と書字~デジタルとアナログの間で~実証実験中間報告

長崎短期大学 准教授 岩﨑千恵(いわさき ちえ)氏

書字教育の現状

初めて日本語を学ぶ留学生が「かな文字」を習得する際は、お手本を見て学ぶことが多いです。このときに問題となるのが、フォントです。たとえば明朝体の「人」と「入」の見分けが、つかないことも…。

日本人からすると何気ないことかもしれませんが、留学生にとっては難しく、学習意欲の減退につながってしまいます。

参加者のアンケートでも、書字教育に課題を感じている声が多く聞かれました。

母国で学習する際の日本語教育が、様々なフォントを使用していることによる弊害を、入国後、化石した字形の悪い文字を強制することに時間を要する時に感じます。

実証実験中間報告

フォントの違いを留学生はどう感じるのか、「愛着性」「視認性」について調査しました。
愛着性においては、「漢字交じり文」の場合「UDデジタル教科書体」が好まれる結果となり、視認性においては、「ひらがな文」「漢字交じり文」が「UDデジタル教科書体」が好まれるという結果になっています。
母数が少なかったため、もう少し増やして調査する必要はありますが、基本的に日常にあふれているのは「漢字交じり文」であることが多く、このことから留学生に活用するフォントは「UDデジタル教科書体」を使うとよい、という傾向が見えてきそうです。

外国人に選ばれる企業になるための取り組み

崇城大学 就職課 課長補佐 公益財団法人 地方経済総合研究所 特別研究員
前田和則(まえだ かずのり)氏

崇城大学がある熊本県は、人口は減少しているものの、外国人住民の数は増加傾向にあり、その中でも技能実習生の割合が外国人労働者の6割と多い(日本全体平均は2割)のが特徴です。そして、日本にいる外国人は、英語や母語ではなく76%の方が「やさしい日本語」でのコミュニケーションを望んでいるという数値も出ています。このことから、岩﨑先生の調査結果も踏まえ、前田先生は熊本県から受託した「外国人に選ばれる企業育成」に関する事業の中で、「やさしい日本語」と「UDフォント」の必要性を企業に訴えかけています。

日本語教育現場でも役立つ教材支援サイト「Teach U」

熊本大学教育学部附属特別支援学校 後藤 匡敬(ごとう まさたか) 氏

知的障害のある子どもたちの指導をされている後藤先生は、「Teach U」(ティーチ・ユー)というPowerPointを活用した先生方の教材支援を行うサイトの運営者でもあります。「Teach U」を使えば、UDデジタル教科書体を使用した複数の教材を誰でも利用可能です。最近では日本語教育現場でも活用できるという声が上がっています。

PowerPointを活用した無償教材「漢字書き順教材」

後藤先生とモリサワがコラボした「漢字書き順教材」(小学2年生まで/随時追加)と、「書き順教材の作り方動画」はこちら で詳しく紹介しています。

パネルディスカッション
「日本語教育における各現場の問題点」 

みなさんの現場では、どのような課題を感じていますか?

岩﨑先生
岩﨑先生

日本語ネイティブにやさしい日本語の研修をする時、やさしい日本語を活用することが難しいと感じている人も多いのですが、より理解しやすい事例として効果的な内容はありますか? 

前田先生
前田先生

自分が普段使っている日本語(掲示物やメールなど)が分かりやすいのか?分かりにくいのか?を判断、理解することに重きを置いています。研修では参加者自身が作成した内容をやさしい日本語に書き換えるワークを実施したところ、「書き換えが難しい」という意見が多く、最初の段階では日本語教育の専門家のサポートが必要だと感じています。 

岩﨑先生
岩﨑先生

そうですね、私も自治体にやさしい日本語に関する研修会をするとき、相手の立場に立って「お互いに配慮する事が大切」と伝えています。UDフォントも文字を見る人たちへの配慮の一つなので、このようなところが「やさしい日本語とUDフォントの共通点」だと感じます。 

岩﨑先生
岩﨑先生

教材を配信されている後藤先生のもとには、日本語教育関係者からどのような声が届いていますか? 

後藤先生
後藤先生

基本的に、特別支援教育に関わる方々に向けてSNSで教材情報を発信しているのですが、楽しみながら日本語を学べるという点から、海外在住の現地で日本語指導されている日本人の方から、「日本語教育でも活用できそう」という反応がありました。今回のことをきっかけに「発信された情報自体がやさしい」という点で、日本語教育と特別支援教育には共通点があるのではと、とても興味深く感じています。

モリサワ
モリサワ

前田先生は、日本語教育現場で感じている課題はありますか?

前田先生
前田先生

留学生はサポートの体制が整っていますが、技能実習生はサポート(日本語教育)が足りていない現状があります。担当している企業向けの講座では、やさしい日本語を使って指示を出し、状況確認をしたり、掲示物はUDフォントなどを使用して、見やすくしたりする配慮が大切だとお伝えしています。 

後藤先生
後藤先生

熊本県に海外企業が来ることにより想定される、周囲の学校への影響はありますか? 

前田先生
前田先生

一部の児童、生徒はインターナショナルスクールに通う可能性がありますが、市立・町立の学校に通う児童生徒も想定されます。その際に日本語教育が必要になりますが、日本語教育を必要とする対象者が点在化した場合の支援に関しては、現在検討中となっています。こういった課題は、日本全体で検討する必要があると思います。

モリサワ
モリサワ

留学生の家族が一緒に来日する家族招致の場合、そのサポートまで日本語教師が引き受けるのは大変だと思いますが、自治体や国からのサポートはあるのでしょうか? 

岩﨑先生
岩﨑先生

佐世保市では、「多文化交流ネットワーク」の取り組みがスタートし、外国人住民を対象とした無料相談会を多言語で開催しました。

留学生は支援を受ける側、という見方が多いと思いますが、その存在自体が自治体とつながりをもつことで、共通課題の明確化など自治体のエンパワメントにつながります。今後もこのような周囲との連携が大切だと思います。

モリサワ
モリサワ

前田先生が活動されている熊本県は自治体との連携がうまくいきそうに見えますが、何から始めていいのか困っている人や自治体も多いために、先生の経験からアドバイスはありますか? 

前田先生
前田先生

熊本県は、県としては企業向けの支援活動をしており。海外企業が来るエリアでは、市町村レベルで住民向けにやさしい日本語の講座をしていこうという動きがあります。日本語教育に関しては、自治体と協力関係にある日本語教育の専門家が各地域にいるはずなので、相談してみるといいと思います。 

UDフォント、モリサワに期待すること

岩﨑先生
岩﨑先生

UDデジタル教科書体を使用するようになってから、明らかに外国人留学生の反応が変わり、日本人学生からも「すごく見やすいです」と言われることが多くなりました。今後さらに、UDデジタル教科書体のラインナップいろいろ開発されるとうれしいですね。また、モリサワの人脈を通して、様々な研究や新しいつながりを生んでほしいと思っています。 

前田先生
前田先生

今回のセミナーで私自身、後藤先生という新たな出会いがあったように、モリサワには、フォントを通じて様々な分野をつなぐハブになって欲しいと期待しています。 

後藤先生
後藤先生

情報のやり取りの基礎である文字の部分で、より多くの人にとって見やすいフォントを開発されたことの功績は大きいと感じています。やさしい情報活用の部分で今後も、モリサワと協力していきたいです。 

セミナーの全貌を視聴したい方は、下記より視聴可能です!

講師紹介

長崎短期大学 准教授 岩﨑千恵(いわさき ちえ)氏

専門は比較社会文化学。「在住支援のためのやさしい日本語」の普及活動として、2020年から佐世保市役所職員を対象とした「やさしい日本語研修」を実施。「外国につながる子どもの学習権」「言語活動とビブリオバトル」等、多文化共生実現のための研究や言語教育支援に尽力。

崇城大学 就職課 課長補佐
公益財団法人 地方経済総合研究所 特別研究員
前田和則(まえだ かずのり)氏

大学で外国人留学生のキャリア支援をする傍ら、熊本県、熊本市、北九州市等、自治体の外国人雇用関連のセミナー講師も担当。2022年度熊本県外国人活躍促進支援事業では企業向け異文化理解・やさしい日本語講座の企画、講師を担当している。 

熊本大学教育学部附属特別支援学校
後藤 匡敬(ごとう まさたか) 氏

熊本大学教育学部附属特別支援学校教諭。2019年に特別支援教育向けデジタル教材配信サイト「Teach U」を立ち上げ,2022年12月に170万アクセス突破。最近は,世界中の日本語教育分野に活用の広がりが見られる。デジタル庁「good digital award」2022年度部門優秀賞(教育部門)受賞。水内豊和・後藤匡敬 編著「特別支援教育 1人1台端末活用実践ガイド 自立活動他編/各教科中心編


日本語教育の現場でも活用できる55書体のUDフォントが活用可能なプラン 
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学校組織としての課題解決に興味がある方、UDフォントの活用を検討される方は、下記よりお気軽にご質問ください。 

『生活者としての外国人支援~「やさしい日本語」とUDフォント~』と題したセミナーのレポートも公開中、やさしい日本語の考案者のお話も掲載しています。