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2022.07.25

【教育Day 29日】 生活者としての外国人支援
~「やさしい日本語」とUDフォント~

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共生社会に向け、多様な人々に質の高い教育を提供することや生活する上で必要な情報をしっかり届けることが重要視されています。2022年5月末のオンラインイベントで、【教育Day】では母語以外の言語習得とUDフォントをテーマに、【自治体Day】では自治体の広報と共生社会をテーマに構成し、各業界の専門家をゲストにお招きしてさまざまな講演を行いました。​​ 

今回は、5月29日(日)の『生活者としての外国人支援 ~「やさしい日本語」とUDフォント~』をレポートします。 

セミナー当日のアーカイブ動画を視聴したい方は、下記よりご視聴いただけます。 
※動画視聴には、登録が必要になります。 

※アーカイブ動画は、一部を編集させていただいています。 

セミナーレポート

セミナーの満足度

参加者の声

参加者
参加者

佐藤先生から、災害時に必要なことを伝えるための「やさしい日本語」と、コミュニケーションのためのやさしい日本語、2つの違いについて説明を聞き、それらを混同していたことに気が付きました。
それぞれ必要なツールだと思いますが、目的の違いを認識したうえで活用していきたいと思いました。

参加者
参加者

これまで明朝体の突起(横線についた三角形のうろこや縦線やはらいの先についた突き出た部分)など、そのままに書く学習者を何人も見てきました。その都度訂正はしましたが、文字の学習は本人任せ的なところがありました。

UDデジタル教科書体と従来のフォントの違いを知り、文字導入段階で、手書き文字と印刷に使う書体の形状の違いをもっときちんと意識すればよかったと思いました。

参加者
参加者

崇城大学では、入学試験のフォントをUDフォントに切り替えられるなど、各種案内・文書の UDフォント化が、自然発生的に進んでいるという話が印象に残りました。私は大学職員なので、「外国人留学生にも優しい環境づくり」という点で他人事ではなく、自戒の意味も含めて聞かせていただきました。

モリサワより

モリサワ
モリサワ

今回のセミナーでは、留学生の言語支援をされている岩﨑先生より「UDデジタル教科書体」研究のご報告、阪神淡路大震災を教訓に「やさしい日本語」を考案された佐藤先生、実際に「やさしい日本語」を活用されている前田さんより、お話をいただきました。
「やさしい日本語」の活動は、日本に住む外国人にとっても、支える自治体にとっても、大きな助けになっていることを実感しました。
岩﨑先生の研究結果を踏まえ、モリサワでも微力ながら日本語を学ぶ方へのサポートを深めていければと思います。

セミナーの内容

「書字教育におけるUDフォントの重要性 ~留学生への日本語教育実践の視点から~」

長崎短期大学 准教授 
岩﨑 千恵(いわさき ちえ) 氏

私は長崎短期大学で留学生の言語支援をしていますが、日本語を初めて学ぶ留学生は、テキストやウェブページを 利用して日本語の文字を覚えることが多いと聞いています。独学のため、「人」と「入」を同じ文字と認識してしまうなど、文字の見分けがつかなくてつまずく留学生は決して少なくありません。これでは、学習意欲も減退してしまいます。 

また、文字を間違って覚えてしまうと、テストで不正解となったり、郵便物が届かなかったり、就活時の履歴書で好印象をもたれなかったりと、社会生活における様々な不利益が生じる可能性があります。

そのため、留学生向けの教材はわかりやすいフォントであることが重要です。なかでも優れていると思うのが、UDデジタル教科書体です。当初はロービジョン(弱視)の子ども向けに開発されたこのフォントですが、読み書きに障害のある子どもや高齢者、留学生など、ロービジョン以外の多くの人々にとっても、読みやすさを感じられるフォントです。まさにユニバーサルデザインなフォントと言えると思います。

生駒市教育委員会がおこなった、UDデジタル教科書体を使った実証実験※の記事を読んだ私は、「留学生にも同じ効果が得られるのでは?」と仮説を立て、採用しました。実際、留学生への意識調査ではUDデジタル教科書体が「読みやすい」(57.9%)、「好ましい」(72.2%)、「手書きの文字との一致性を認識しやすい」(88.8%)という結果が出ています。 
※岩﨑先生が実施した、留学生への意識調査はこちらでも紹介しています。
※生駒市教育委員会による実証実験はこちら(PDF)にてお読みいただけます。

また本学では長崎県佐世保市と協働しながら留学者の支援も実施しています。同市の出前授業ではUDフォントのほか、外国人にも理解しやすい簡単な言葉で、情報をわかりやすく伝えられる「やさしい日本語」も採用しています。

そして、岩崎先生より「日本語学習者を対象としたUDフォントの有用性に関する検証」について、募集のお知らせがありました。 日本語教育の現場における文字の重要性を明らかにし、学習者の学びやすい環境を整える1つの手立てとして、実証試験への協力が呼びかけられました。 

※応募は終了しました
応募について
・実験目的:日本語教育の授業方法や書字教育教材の改善
・被験者対象:日本語を学んでいる方(日本語能力のレベルは問いません)
・募集対象:被験者の協力が得られる、教育関係者または日本語教師 

※検証の内容や全体のスケジュールなどにつきましては、アーカイブ動画(29:50~51:45)にてご紹介しています。  
※お申込みいただいた方には、担当より実証実験説明会動画などのご案内をさせていただきます。 
※被験者の数が必要な人数に達した場合、募集を終了させていただきます。 
※応募後に、実証試験への参加を辞退することも可能です。正確なデータが取得できないなど、被験者の状況によっては実証試験が実施できない場合があります。 

パネルディスカッション

弘前大学 名誉教授
佐藤 和之(さとう かずゆき) 氏

社会言語学が専門の佐藤氏は、外国人へ災害などの緊急情報を正確に伝えるための言葉「やさしい日本語」の生みの親です。開発のきっかけは、1995年に発生した阪神淡路大震災。日本語も英語もわからず困っている外国人がたくさんいることを知った佐藤氏は、外国人にも日本人にも正しい情報が伝わるよう「やさしい日本語」を考案しました。 

崇城大学 就職課 課長補佐 
前田 和則(まえだ かずのり) 氏

日本語学校で日本語を指導していた前田氏は現在、崇城大学(熊本市)の就職課の職員として、日本人や留学生に進路指導をおこなっています。留学生を対象とした就職支援講座では「やさしい日本語」とUDフォントを組み合わせて使用しているそうです。企業の採用担当者からの評判はよく、資料の作り方をアドバイスすることもあるそうです。 

『日本語教育支援の現場における「やさしい日本語」とUDフォントの重要性の親和性について』 

岩﨑氏、佐藤氏、前田氏の3名により、「やさしい日本語」とUDデジタル教科書体の親和性に関するパネルディスカッションがおこなわれました。 

岩﨑氏が「「やさしい日本語」が広まっている実感はありますか?」と質問すると、佐藤氏は「中越地震の際、「やさしい日本語」で情報発信をしたところ、被災者やそれを救う人たちのストレスが軽減していることが調査結果により明らかとなりました。そこから広がりを見せ、東日本大震災や熊本地震でも活用されるようになっています」と回答。また伝わり方は、フォントによって変わることを岩﨑氏から教わったことで、「いい気づきとなり、有り難い」と御礼の言葉を述べておられました。 

崇城大学では、「やさしい日本語」やUDデジタル教科書体の重要性を訴える教職員が増えていて、「自然発生的にそれらが広まっている」と紹介した前田氏。実際に崇城大学の入試問題のフォントは、UDデジタル教科書体に切り替えたとのことです。 

また近年、国語の教科書でUDデジタル教科書体が採用された事例から、「学習効果に優位性があると社会的に認知されてきた結果だと感じている」一方で、「対象者を分けて、より詳細な検証を行う必要がある」と岩﨑氏が話すと、「確かな結論が出ると嬉しいですね」と佐藤氏も応えていました。

3人はUDフォントと「やさしい日本語」を組み合わせることで、さまざまな効果がもたらされることを改めて確認し合っていました。 

各先生方のお話やパネルディスカッションの全貌は、アーカイブ動画にて配信中!

交流会

イベントの最後には、視聴者を交えた交流会を30分ほど実施。英語教員の方、日本語教師の方、メディア開発をおこなっている民間企業の方など、さまざまな職種の方が参加されていました。 

「「やさしい日本語」やUDフォントが必要である」と現場のエピソードの共有もあり、和やかな雰囲気で進められました。また「大きな学びになりました」「ためになりました」など、参加者からは感謝の声がたくさん聞かれたほか、「災害情報などが外国人に伝わりにくいことを、日本人が認識するためにおすすめの教材はありますか?」など、質問もいろいろと寄せられていました。 


日本語教育の現場でも活用できる55書体のUDフォントが活用可能なプラン 
MORISAWA BIZ+の詳細はこちら

学校組織としての課題解決に興味がある方、UDフォントの活用を検討される方は、下記よりお気軽にご質問ください。

「日本語を勉強する初級のフォントに「UDデジタル教科書体」がちょうど良い」と感じている、北海道大学 伊藤孝行 氏のインタビューを公開中! 
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