インタビュー

2022.12.05

「特性のある人の役に立ちたい」著者のこだわりで採用したUDフォント

見出し: 本文:

2022年2月『死にたかった発達障がい児の僕が自己変革できた理由』を上梓した西川 幹之佑 氏。著名人でもない現役大学生が書いた本にも関わらず、発達障害者が感じていることがよく分かると評判を呼んでおり、すでに4刷になったと言います。発達障害の当事者である西川氏は、「当事者目線の本」を目指し、本文でUDデジタル教科書体を使ってくださっています。ご自身が読み書きで苦労した実体験をもとに、UDデジタル教科書体を選んだ理由とは?元麹町中学工藤先生とのエピソードも伺いました。

UDデジタル教科書体との出会い

UDデジタル教科書体は西川氏にとってどのようなフォントですか?

西川氏:UDデジタル教科書体との出会いは、中学校の教科書でした。僕にとっては、フォントによって見やすさや、読みやすさが大きく異なるのですが、このUDデジタル教科書体はとても読みやすく目が疲れにくいと感じています。

さらに、以前は手書きの文字のバランスが悪く、自分でも読めないことがありましたが、UDデジタル教科書体と出会って、文字の大きさが揃うようになりました。

特性のある子どもが目指すのは、学校の先生が書くようなきれいな文字ではなく、課題を提出した際にバツがつかない、自分が困らない文字が目標です。こういう文字がお手本なのだという事を、UDデジタル教科書体から教えてもらった気がします。

(西川氏直筆のメモ)

どうして書籍本文にUDデジタル教科書体を採用したのでしょうか?

西川氏:本の執筆を考えたときに、困っている人たちに配慮した、内容が伝わる本にしようという発想がありました。中身も大切ですがその前に、読み手に伝わる「当事者目線の本」にしたいと考えていました。

世間には発達障害者向けの書籍が多く出版されていますが、フォントや紙の色まで配慮されているものは少なく「この本は、誰に読ませよう思って作られているのだろうか?当事者意識が軽んじられているのではないか?」と感じていました。

どんなに中身が良い本でも、見にくさ、読みにくさを感じている状態では、内容が頭に入ってきません。今回執筆した書籍では、自分だからこそ分かる当事者の目線から、フォントはUDデジタル教科書体を全面的に採用し、紙の色も真っ白ではなく少し抑えた色合いにしました。

特性のある人だけでなく、祖母から見やすいと言ってもらえ、書評でも読みやすいと評価いただける、読み手に「読みたい」と思わせる書籍にできたのではないかと思います。

西川氏の書籍

元麹町中学校校長 工藤勇一先生の教えから掴んだチャンス

書籍の中に元麹町中学校の工藤勇一先生とのエピソードがでてきますが、
工藤先生からの教えで、特に影響を受けたことは何ですか?

西川氏:一つはチャンスの神様の話です。チャンスは一瞬であり、そのチャンスを掴むためには、常に準備をして積み重ねておくことで、不意に来た一瞬のチャンスを掴むことができます。祖父からも同じ話を聞いたことがあり、この本を執筆するときに、チャンスの神様は本当にいるのだと実感しました。

そしてもう一つが、目的と手段を間違えてはいけないという事です。目的を達成するためにはいくつか手段が必要ですが、行動する中でその手段がいつの間にか目的になってしまう事があります。そんな時は最終的な目的である「最上位目標」を明確にすることが大切です。「目的」を明確にして、それを達成するための「手段」を考えるという工藤先生の教えは、今後も大切にしていきたい考え方の一つです。

こういった工藤先生からの教えが基となり、英検で悩んでいた時期に自分が最も目指すべき「最上位目標」を明確にすることで、本当は英検の合格が自身の最上位目標ではないことに気づき、課題を乗り越えられた経験があります。実はこの時に発見した最上位目標こそが、今回の本の執筆に関わっています。

今回の執筆の経緯を教えて下さい。

西川氏:元々は特性のある人も学びやすい英語の学習書を作りたいと思ったことが始まりでした。自身が英検の勉強をする際に、読みやすい本を探したのですが、文字が細く、紙が白く、読みにくいと感じる書籍ばかりでした。

もちろん特性のある人向けに出版されているドリル本もあるのですが、そういった書籍は特別支援教育関連の棚になってしまい、自分たちは別枠なのだと、寂しく悲しい思いになりました。

様々な理由があり英検本としての出版には至りませんでしたが、今回執筆した書籍は工藤先生から学んだ「特性のある人たちの役に立ちたい」という最上位目標を変えず、訪れたチャンスを生かすために方針を変更した結果です。

(インタビューに答える西川氏)

今でも最上位目標のひとつである、学習書、教科書を全てUDフォントにしたいという想いはあります。全ての人に良いものは難しいかもしれませんが、十人中九人が読める!読みやすい!と言ってもらえるものを作りたいと思います。

英単語の勉強を始め、文字の学習にも苦労されたようですが、工夫したことはありますか?

西川氏:昔から、英語のフォントが見にくいと感じていて、数字の「2」とアルファベットの「Z」を書き間違えたり、小文字の「b」と「d」が反転して逆になったりと、混同して苦労した経験があります。

現在では小学校でも、GIGAスクール構想で一人一台端末が配布されるようになっていますが、当時はまだ教育現場におけるiPadなどを利用した支援は広まっておらず、手書きが中心の社会でした。今後も、手書きが教育現場や生活の中で無くなる事はありません。だからこそ、手で文字を書くことを諦めず、母と知恵を出し合い、工夫してきました。

その一つが「手書きフォント」の作成です。それぞれの文字の「何が違うのか?」を念頭に、自分が見て認識できる文字の違いを意識的に書くことで、区別できるようになりました。

フォントを作ることで文字を学ぶというのは、とてもユニークな方法だと思います。
最後に、インタビュー記事を読んでいる皆さんにひと言お願いします。

西川氏:生活の中で「見る」という事はとても重要な要素です。フォントを一つ変えるだけで、中身は大きく変わり、読んでいる人にも大きな影響を与えます。「たかがフォント、されどフォント」です。
今回このインタビューを読んでくださった人が、今後、フォントにも意識を向けてくれたら嬉しいです。

毎年、4月2日は国連が定めた世界自閉症啓発デーになっています。現在、世界自閉症啓発デーに向けて様々な企画を立てており、そのひとつとして学校内で使用するプリントを期間中はUDデジタル教科書体にする企画を計画しています。フォントをきっかけに、当事者とユニバーサルデザインについて考える機会を作っていきたいです。

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西川 幹之佑(にしかわ みきのすけ)
2002年、新潟県三条市生まれ、東京育ち。幼稚園中退。千代田区立麹町中学校、英国・帝京ロンドン学園卒。現在、帝京大学法学部政治学科1年生。高祖父は帝大の教授で測機舎の創業者である西川末三、高祖母はロシア文学の翻訳と社会運動家として有名な神川松子。高祖父から4代続けて東大卒の家系に生まれ、周囲から東大入学が当然と期待されるもADHDとASD傾向、学習障害のため小学校2年生まで特別支援学級に在籍。

その後通常学級に転籍したものの学習面・社会面で壁にぶつかり、生きる意義を見失い小学校3年生で死を考えはじめる。小学校卒業後、当時麹町中学校校長であった工藤勇一氏に出会い、「自律」という考え方を学び人生が一変する。在学中に英検準2級、ニュース検定2級を取得。コロナ禍で将来について考えるうちに、自分のように苦しむ発達障害児の役に立てることがあると考え、書籍『死にたかった発達障がい児の僕が自己変革できた理由』の執筆を企図。


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