インタビュー

2025.02.18

地域を育てる産官学連携の取り組み いなべ市『いなべティーンフェアトレードブック』

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いなべ市 農林商工部 商工観光課 和波 遥菜さん

三重県いなべ市では、持続可能なまちづくりを進めていくため、地産地消や地域経済の循環を目指しフェアトレードの普及に取り組んでいます。この普及活動のひとつとして、市内で育つ子どもたちにフェアトレードを学ぶ機会をつくり、フェアトレードに取り組んでいる市内の事業者を知ってもらうための電子冊子『いなべティーンフェアトレードブック』をいなべ市立藤原中学校の生徒たちが制作するための支援を行なっています。
※産官学連携としてモリサワとともに2022年度から取り組みを開始し、今年度で3度目(3年目)の取り組みとなります。

今回は、いなべ市 農林商工部 商工観光課の和波さんに、この産官学連携の目的や取り組みを通じて子どもたちにどのように育ってもらいたいかなどお話を聞かせてもらいました。

電子冊子『いなべティーンフェアトレードブック』はコチラからご覧いただけます
※電子冊子ビューアは、株式会社モリサワが展開する多言語ユニバーサル対応デジタルブックプラットフォーム「カタログポケット」です。

いなべティーンフェアトレードブック制作までのプロセス 

7月 いなべ市立藤原中学校に「伝わる資料をつくろう!」の授業を実施
市内のフェアトレードに取り組む事業者へインタビューをして、レポートを作成するにあたり、モリサワによる「伝わる」資料作成の授業を実施しました。「伝わる」を意識すること、資料作成のポイント、フォント選びの大切さについて学んでもらいました。

7~8月 藤原中学校の生徒がフェアトレードに取り組むお店へ取材
夏休み期間をつかって子どもたちが市内のフェアトレードに取り組む事業者へインタビューをし、レポートを作成します。

9月 レポート添削後にフィードバック授業を実施
生徒が作成したレポートをモリサワが添削し、良かった点、改善したい点、リメイク例を示すフィードバック授業を実施しました。

10月 生徒が自身のレポートをリメイク
モリサワからのフィードバック授業を経て、生徒自身でレポートをリメイクします。

12月 カタログポケットで世界へ配信
生徒がリメイクしたレポートをいなべ市でとりまとめ、電子冊子『いなべティーンフェアトレードブック』としてカタログポケットにより10言語対応の電子配信をします。

2024年度版はコチラからご覧いただけます

フェアトレードはSDGsのゴールすべてにつながる

  Q.この産官学連携によって、子どもたちにどうなってほしいとお考えですか

いなべ市の子どもたちには、自分の生まれたまち、住んでいるまちを好きになってもらいたい、そんな想いを持ってこの産官学連携に取り組んでいます。
子どもたちが将来について考えるとき、「このまちに住み続けたい」、たとえ学業や就職でこのまちを離れても、「いつか戻ってきたい」などというように、「住み続けられるまち」「選ばれるまち」にしたいと考えています。
持続可能なまちづくりに、人は欠かせません。そして選択肢の1つになるには、住んでみたい、住み続けたい魅力があるまちでないといけないと考えています。

フェアトレードは、SDGsのゴールすべてにつながると言われています。

「適正な価格」と「よい品質」があれば、世界中で好循環な経済活動が生まれます。
いなべ市内のフェアトレード活動であれば、地産地消や地域経済の循環につながります。
発展途上国の生産物等を適正な価格で継続的に購入することで、その国の生産者、労働者の生活改善と自立を目指すフェアトレードを推進しながら、同時に地産地消活動「ローカルフェアトレード」を促進することで、いなべ市の地域活性化を目指しています。

商品開発など地域の産業振興や地元企業との協働、子どもたちへの新たな学びの場の提供などを通して、持続可能なまちづくりを進めていきたいと考えています。

地域を愛し、住み続けられるまちづくり

いなべ市では、住み続けられるまちを目指して地域活性化の取り組みを進めています。

定住をしてもらうには、満足度や住みやすさを保ち、伸ばしていくこと、つまり、自分のまちに誇りや愛着を持ってもらうことにつながる取り組みが必要となります。

藤原中学校は、学校全体としてSDGsに対する機運が高く、「地域を愛し、住み続けられるまちづくり」をテーマとし、地域でSDGsに取り組んでいます。

モリサワが実施する、「伝わる資料をつくろう!」の授業を受けることで、SDGs学習に留まらず、さらに学ぶことのできる環境があることも、大きく影響しているのではないかと思っています。

  Q.子どもたちの変化は感じましたか

今回も生徒たちは自分の足で取材に行きました。
最初は「フェアトレードって?」という生徒でも、基礎知識を学び、店舗に足を運ぶことで、自分の住んでいるまちには、こんなお店があるんだ、こんなふうに働く大人がいるんだ、こんなことに取り組んでいる大人がいるんだ・・・など、さまざまないなべの魅力と出会います。
モリサワから伝え方のポイントを学び、自ら調べたことをレポートにまとめ、仲間や先生たちに伝える姿はとても頼もしいです。

取り組みを通じて生まれる相互作用

事業者側にとっても、生徒から取材を受けることは、よい刺激になったと聞いています。店舗を紹介してもらったり、フェアトレードへ賛同した理由などを尋ねられたりすることは、自分たちの取り組みを改めて見つめ直すきっかけになるそうです。
このように、取り組む事業者たちの機運も高まり、相互作用が生まれています。

そしてこの取り組みは、日本フェアトレード・フォーラムからも注目され、2023年、スイスで行われたフェアトレードタウンを有する国々が集まる国際フェアトレードタウン会議でも紹介されました。

フェアトレードを知り、お店に興味を持ち、いなべ市を訪れる。
いなべ市でフェアトレードを知り、フェアトレード商品を手にする、地域のものを手にする。
順番はなんでもいいのですが、それぞれが活性化されていく取り組みだと感じ、これからに期待しています。

地域活動やブランディングに企業のノウハウを

今回の取り組みを通じて「伝わる」情報発信の大切さを改めて感じています。
一部の人、一部の地域だけで盛り上がっていては、全体の活性化につながりませんし、大勢の人に知ってもらうからこそ、事業者のやる気が生まれたり、シビックプライドが醸成されたりするのではないかと思います。この取り組みを、たくさんの人に知ってもらい、いなべというまちに興味を持っていただくためには、シティプロモーションが重要となります。

現在、フェアトレードの取り組みは市民団体が中心に行なっています。活動に使用する広報物やイベントで使用するパネルなども、皆さんの手で作られています。手作り感もありつつ、取り組みについてよく理解している方々が作成した広報物ですので、とても素敵な仕上がりになっています。
ただ、現在は、フェアトレードの仕組み、市内の協力店舗マップ、協賛企業など、伝えたい情報を1つのパンフレットにまとめている状態です。それに加えて、各事業者の想い、いなべフェアトレードタウンとして活動を進めた歴史・・・など、まだまだ伝えたいことがたくさんあります。
これらをどういった方法、媒体で伝えていくべきなのか、ぜひモリサワにはアドバイザーとして資料作成のノウハウを地域の皆さまへ伝授いただき、今よりもっと伝わる情報発信の実現ができればと考えています。

地域活動などさまざまな取り組みを進めていくなかで、自治体だけではできることに限りがあります。それぞれノウハウをお持ちの企業や地域の皆さまにご協力をいただきながら、関わる方々がハッピーになり、さらに地域も活性化していければいいですね。

お知らせ

広報力アップ研修! 「伝わる」資料デザインプログラム

わたしたちモリサワは今年度より、公共団体、学校職員・教職員、企業向けに、『伝わる』資料デザインプログラムとして資料作成研修をはじめました。
フォントメーカーによる、資料作成術を分かりやすくロジカルに解説し、センスだけに頼らない資料作成のスキルアップをサポートする研修プログラムです。
自治体事例もあわせて、詳しくはコチラをご覧ください。

地域ブランディングを強化する自治体制定フォント

情報発信の多様化が求められる今、自治体の顔(ブランドイメージ)を明確化するために声(フォント)を統一し、地域ブランディングを強化しませんか。

自治体制定フォントの効果
・地域ブランディングの強化
・円滑なシティプロモーション
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詳しくはコチラの資料をご覧ください。