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2022.10.11

Fontビギナーズガイド4 「字面」とフォントのサイズ感

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フォントメーカーのモリサワが、フォントの基礎知識をレクチャーするシリーズ。今回は「字面」とフォントが持つサイズ感について解説します。


フォントを選ぶときフォントの一字一字の形を見て選んでいるはずなのに、文章としてレイアウトしてみると全体が思ったような印象にならなかったことはないでしょうか?

A1ゴシック
新ゴ

この二人のお悩みは、どちらも選んだフォントの「字面」のサイズが関係してきます。字面のサイズは文字が文章になった時、見る人に与える圧に影響します。

字面のことを知ることで、以下のメリットがあります。

  1. 文字を打った時の、見た目の圧をコントロールできる
  2. 本文や見出しの、各用途向きのフォントを見極めることができる

この2つを詳しく解説する前に、まずは「字面」について簡単にみていきましょう。

1. 字面とは?

日本語のフォントがデザインされるときに、正方形の枠の中に一字ずつデザインされます。枠に対して文字の形をした部分を「字面」といいます。この言葉は活字の用語で、活字で文字の形をした飛び出た部分をそう呼んでいたことに由来します。

そして字面のサイズはフォントによって違います。同じサイズで文字を打っても、フォントによって実際の文字の大きさは異なるのです。

字面の大きなフォントは、文章にしたときに隣り合う文字との間が狭くなり、圧迫感がでます。反対に字面が小さいフォントは文字が小さく隙間が広くなるので、控えめな印象になります。

字面の特徴

  • 字面はフォントの「文字の形をした部分」
  • 字面が大きいと、文字は大きく、圧迫感が出る
  • 字面が小さいと、文字は小さく、控えめな印象になる

このことを心にとめて、先ほどのお悩みをもう一度見てみましょう。

2. 字面のサイズをフォント選びに活用しよう

主張を出したいポスター

字面の小さいフォントで作った場合

A1ゴシック

「みんなに協力してほしい」って大声で伝えたい気持ちなのに、なんだか控えめで弱い気がする…。文字間があいて見えるから?

「控えめ」「文字間が開いて見える」。このお悩みは、使っているフォントの字面が小さいからです。

字面の大きいフォントに変えた場合

新ゴ

文字が大振りだからぱっと見でインパクトもあるし、圧を感じる。より緊急性も伝わるかも…!


さらっとした印象にしたいスライド

字面の大きいフォントを使った場合

新ゴ

今回の発表ではさらっと事実を伝えたいのに、文字が大振りで圧迫感がある…

「文字が大振り」「圧迫感がある」。このお悩みは、使っているフォントの字面が大きいからです。

字面の小さいフォントに変えた場合

TBUDゴシック

字面が小さくなって圧迫感が減ったから、さらっとした感じがでた! 押しつけがましくないから、見る人に理性的な印象や、中立的な印象が与えられそう…!

このように、字面のサイズを意識してフォントを選ぶことで、見る人に与える圧をコントロールできます。うまく利用してフォントを選ぶと、目的によりフィットしたデザインになります。

字面サイズと印象

  • 小さい→圧が弱い→控えめ、理性的、淡々と語っている感じ
  • 大きい→圧が強い→インパクト、圧迫感、大きな声で叫んでいるような印象

3. 字面のサイズと「本文向き?」「見出し向き?」

前の章では、字面のサイズが見る人に与える印象について説明しました。

それ以外にも、字面のサイズによってそのフォントが本文向きか見出し向きか、向いているシーンを見極めることができます。

字面の大きいフォント=見出し向き

字面が大きいフォントはインパクトがあるので、見出しなど短い文章に向いています。半面、長文にすると文字がぎっしり詰まって圧迫感が出るので、書籍本文などには少し不向きです。

字面の小さいフォント=本文向き

字面が小さいフォントは見る人への圧が少ないので、長文を疲れずに読ませることができます。つまり本文向きの書体です。インパクトを出したい見出しだと、少し印象が弱くなります。

字面サイズと印象

  • 字面が小さい→圧が弱い→本文向き。圧迫感が少なく長文を疲れずに読ませることができる
  • 字面が大きい→圧が強い→見出し向き。短い文章を目立たせるのに向いている。

チラシなどでは全体の文章量が少ないのであまり意識しなくても大丈夫ですが、広報誌、レポート、論文などの長文をレイアウトするときは、この関係を頭に入れて紙面を設計すると、読みやすい紙面を作る近道になります。

4. まとめ

字面のことを知ることで、以下のメリットがあります。

  1. 文字を打った時の、見た目の圧をコントロールできる
  2. 本文や見出しの、各用途向きのフォントを見極めることができる

フォントを選ぶとき、つい形に注目して選んでしまいますが、字面のサイズも見る人に与える印象に影響してきます。

過去の回で説明した「ウエイト」「明朝/ゴシック」「エレメント」の知識を使って文字の形を見てフォントを選んでも、字面のサイズがフォント選びのコンセプトに合っていないとデザインの印象がちぐはぐなものになってしまいます。

また、長文では全体の読みやすさに影響するポイントにもなるので、ぜひフォントのサイズ感を気にして選びましょう!


デザインをはじめたばかりの人は、この記事でデザインのプロセスを学んでみよう!

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