趣旨と目的
2020年より小学校での読み書き指導が始まりました。小学生から大学入試まで関わる英語教育改革の中、現場で不安を抱えている指導者や保護者の方も多いのではないでしょうか?
読み書きに難しさがある子どもたちが英語学習をスムーズに進めていけるように、群馬大学 大学教育センター教授 飯島睦美先生のご提案により、その基礎作りをするための指導方法と教材例を紹介いたします。
また飯島先生のご経験に基づく英語学習の進度と必要となる能力に合わせた「9つのStage」の理論を基盤とした教材のアイデアを、フォントメーカのモリサワがUDフォントでフォローする形で、英語教育に関わる皆さまに飯島先生の監修のもと英語教材を無償共有することを目的とし、配信することになりました。
昨今、様々な学び方の違いやそれに合わせた指導方法などが議論されることが多くなりましたが、これらの教材はこういった様々な学び方を持つ、多くの子どもたちにも有効であることでしょう。教育現場で広くご活用いただき、参考にしていただければと思います。
記事内でご紹介した教材(PowerPoint / PDF)は、実際にダウンロードし、活用いただけます。 下記教材ダウンロードフォームより簡単なご登録をいただいた後、ダウンロードページに移動します。(一度登録いただければ、次回より入力内容が保存されます。)
飯島睦美先生
群馬大学 大学教育・学生支援機構大学教育センター 教授
英国バーミンガム大学修士(TESOL)
大阪大学大学院 人間科学研究科博士後期課程単位満期取得 退学
著書等
『読み書きに困難のある児童・生徒のための英語学習支援』「英語教育」連載2019年4月号~2020年3月号, 2019-2020, 大修館書店
『はじめての小学校英語 特別支援教育の視点でどの子も学びやすい授業づくり』大谷みどり 飯島睦美 築道和明, 2020, 明治図書
『多感覚を生かして学ぶ 小学校英語のユニバーサルデザイン』 竹田契一(監修)飯島睦美・村上加代子・三木さゆり・行岡七重 (著),2020, 明治図書 他。
言語学習における音韻意識と文字音声化能力
本サイトでご紹介する指導方法例や教材例は、英語学習の基本となる「文字と音(オン)」の関係に対する気付き、音韻意識を育てることを目的としています。英語の学習内容の進度に沿った「9つのStage」に基づき、教材の配信を行っていきます。
Stage 1. 英語の音を知ろう!
日本語と英語の音と文字の違いを明示することが大切です。ローマ字を小学校3年生で学習しますが、案外子どもたちは、ローマ字を習う意義を理解しないまま、「ローマ字ができないと英語もできない」という呪縛(??)のもと、なんとなくアルファベット文字に触れ始めています。やはり、まずは音のイメージ(音韻表象*1)をきちんとインプットすることから英語学習に入っていくことが必要ではないかと考えます。
*1 音韻表象:意識の中にできあがった言語の音
Stage 2. 英語の音と文字に慣れよう!
子どもたちを取り巻く現代社会では、日常生活の中に英単語があふれています。日本語化されてしまい、英語の本来の意味とは異なる使われ方や語彙変化しているものもありますが、幼いころから慣れ親しみ、すでに「理解語彙」兼「使用語彙」として、子どもたちにインプットされている英単語はたくさんあります。そういったすでに知識の一部となっている英単語を使って、英語の音を復習しながらインプットし、英語の音とアルファベット文字の同定を目指します。
Stage 3. 英単語学習
中学生や高校生に英語学習での難しさを尋ねると、多くの学習者が「英単語が覚えられない」 と回答します。ここに記憶力の問題も絡んできますが、単に情報を保持するということだけでなく、物事を記憶するというメカニズムを理解して、学習者の認知や適した学習方法に合わせた単語学習方法が使えると、苦痛である単語学習が少し取り組みやすくなるかもしれません。
Stage 4. 英語の単語の配列
英単語が覚えられても、「英単語の使い方がわからない」という学習者も少なくありません。日本語とは異なる英語での語句の並び方が定着するためには、どのような指導方法や学習方法があるのでしょうか?この点が第一言語である日本語が干渉する部分であろうと思われます。
Stage 5. 英語文を読む方法
英語の単文を読解することができても、複文や重文、さらには長文となると難しさが深刻になる学習者がいます。複文や重文の問題は、接続詞の習得との関係があります。長文となりますと、短期記憶*2、ワーキングメモリー*3、論理的思考力といったことも関わってきます。特にワーキングメモリの弱さがある学習者に対して、どのような学習方法が有効なのでしょうか?
*2 短期記憶:数十秒から数十分保持される記憶で、繰り返し記憶することで長期記憶に移行する
*3 ワーキングメモリー:短期記憶の一種で、思考や判断などの際に必要な情報を一時的に保持し処理する記憶機能
Stage 6. 英語文を聴く方法
英語に関わらず、母語である日本語でも「聴く」という活動に対して、苦手感を強く感じる学習者はたくさんいます。「聞いただけではわかりづらい」ということで、聴覚情報に加えて視覚情報を提示して、分かり易すく指導なさる先生方が多くいらっしゃいます。では、英語を聴きとる力を強化する学習方法には、どのような方法があるのでしょうか?
Stage 7. 英語で話す方法
アウトプットする英語力は、今回の英語教育改革の力点がおかれているところでもあります。「話す」力にも段階があります。日常的会話を二人で話す、自分の意見を大人数の人たちに伝える、など様々です。前者は、Stage8にも関連しますので、そちらに回すとして、ここでは一方的に自分から発信する際の「話す」力に焦点を当てます。
Stage 8. 英語で話す方法(やりとり)
Stage7でも触れましたが、「話す」という活動には聴く相手が存在します。さらに、その聴く相手からのフィードバックがあって、そこに「やりとり」の輪が生まれます。それがコミュニケーションとなります。「やりとり」には、言語能力以外に、相手の意図や状況を読み取る社会的言語能力が必要となります。学習者の中には、この「やりとり」する活動そのものが負担と感じる場合があります。そういった中で、どのような学習活動が考えられるでしょうか?
Stage 9. 英語文を書く方法
第二言語で文章を書く、というのは非常に高度なスキルを要します。ライティング研究分野では、母語ですらきちんと教育されるべきものと位置づけられています。文章産出過程をきちんと理解したうえで、プロセスを段階的に辿れるように導くことが大切であると考えます。さらに、そのプロセスのステップを細かく設定し、学習を進めるうえで学習者にとって、難易度の差に無理のないステップとなるように留意することが肝要と思われます。
各Stageの内容は随時追加されます。
更新については公式SNS(Twitter/Facebook)をチェックしてください。
日本語と英語の音と文字の違いを明示することが大切です。ローマ字を小学校3年生で学習しますが、案外子どもたちは、ローマ字を習う意義を理解しないまま、「ローマ字ができないと英語もできない」という呪縛(??)のもと、なんとなくアルファベット文字に触れ始めています。やはり、まずは音のイメージ(音韻表象*1)をきちんとインプットすることから英語学習に入っていくことが必要ではないかと考えます。
*1 音韻表象:意識の中にできあがった言語の音
教材「ローマ字ポスター」と「ローマ字カード」
ローマ字ポスターの活用説明
問題点:小学校3年生で学習する「ローマ字」が、学習者にローマ字本来の目的が理解されないままに、導入されているケースが少なからずあるようです。そのため、中学校から本格的に開始される単語の音と綴り学習へ効果的につながっていないことは、残念なことです。
目 的:日本語と英語の音の作りの違いに、ローマ字学習を通して気付くことで、英語の音の成り立ちに慣れやすく、さらに綴り学習も取り組みやすくなることが期待されます。
教 材:平仮名で書かれた清音、濁音、促音、撥音、拗音などの一覧表の下に、ローマ字(ヘボン式が基本)の一覧表が貼り付けられたポスター。上の平仮名は、字の真ん中で両開きの窓のように開くように切れ目を入れます。その窓を開くと、下のローマ字が出てきます。か行以降は、左側の窓を開くと子音、右側の窓を開くと母音が出てきます。
ローマ字ポスターの作り方の手順
① 厚手の紙にローマ字ポスターのPDFをプリントアウトする
(カラーと白黒の2種の用意があります)
② ひらがなの書いてある紙の点線をカッターで切る
(実線は後で折り曲げるので、切り落とさないようにしてください)
③ ひらがなと追のローマ字の紙をぴったり重なるようにし、上部をマスキングテープで仮止めする
④ ローマ字の書いてあるグレーの「のりしろ」部分に幅6mm以下の両面テープまたは、テープのりをはみ出さないように貼る
(のりしろの位置からはみ出すと扉が開かなくなりますので注意してください)
⑤ ひらがなとローマ字の紙をずれないように慎重に貼り合わせる
⑥ ひらがなの扉を開く
指 導:下記、動画をご覧ください。
説明動画
1)「ローマ字ポスター」の PDF
(かなの扉を開くとローマ字表記になるカード)
2)「ローマ字カード」の PDF(カラー/白黒)
両面コピーをし、ひらがなの実線に沿って切り取ってください。裏を返すとローマ字表記になります。
3)それを PowerPointで示せる授業応援素材
子どもたちを取り巻く現代社会では、日常生活の中に英単語があふれています。日本語化されてしまい、英語の本来の意味とは異なる使われ方や語彙変化しているものもありますが、幼いころから慣れ親しみ、すでに「理解語彙」兼「使用語彙」として、子どもたちにインプットされている英単語はたくさんあります。そういったすでに知識の一部となっている英単語を使って、英語の音を復習しながらインプットし、英語の音とアルファベット文字の同定を目指します。
教材1「英単語 絵カード」「英単語 音合わせゲームカード」
1)「英単語 絵カード」
2)「英単語 音合わせゲームカード」
※「英単語 絵カード」「英単語 音合わせゲームカード」は両面コピーで印刷してご利用できるようにデザインしています。表裏同じ位置にデザインしていますが、プリンターの仕様により、表裏の位置がずれることがあります。
3)「英単語 絵カード」をPowerPointで示せる授業応援素材
※ 「英単語 絵カード」のPowerPointデータは、1枚ずつのカードを示せるようになっています。
カード30は、「bed」のイラストから、混乱しやすい「b」と「d」の向きを説明用、カード44-46は、空白のカードに子どもたちが好きな単語を書く説明用となっています。
スライドショーで確認し、必要に応じてご利用ください。
※PowerPointデータは、43MB相当のデータ量があるので、空き容量に注意し、ダウンロードに時間がかかりますことをご了承ください。
「英単語 絵カード」の活用説明
問題点:皆さんは、母国語である日本語をどのように習得されてきたのかを考えてみてください。赤ちゃんは生まれてまもなく、周囲の人たちからのことばがけにより、日本語のシャワーを浴び続けます。頭の中にキッチンで使うボールが入ってくると仮定してください。日本語のシャワーは、どんどん溜まっていき、表面張力で水面が盛り上がるようになります。次の瞬間、表面張力が破れ、溜まっていた水が一気に流れ出します。そのタイミングが、赤ちゃんがことばらしきものを発する瞬間なのです。そこからも、引き続き、周囲にあふれる日本語の音に触れ続けます。それにより、頭の中には、自然に日本語の音韻表象(日本語の音のイメージ)が出来上がります。この音韻表象が出来上がったのちに、文字学習が始まります。
この音韻表象こそが、ことばを獲得していくうえで非常に重要なのです。もし、音韻表象がないところに、文字が入っていくとその文字は音と結びつかない記号と化してしまう恐れがあります。十分に時間をとり、まずは音韻表象が頭の中に定着することから始めましょう。
目 的:子どもたちが日常生活の中で、すでに親しんでいる英単語を使って、アルファベットの文字と音の関係を定着させる活動例をご紹介します。フォニックスの一種ですが、ここではあくまでも、英語の音に慣れることを第一の目的とし、文字学習はメインの活動ではありません。すでに記憶に入っている英単語を用いて、なるべく英語らしい音を与え直すことで、英語の音韻表象(英語の音のイメージ)を獲得していくことを目指します。
「英単語 絵カード」について
教 材:一つのアルファベットで幾通りの音素となるものがあります。すでに子どもたちが知っている単語の中と文字に慣れるから、基本的な発音である単語をアルファベットに対し一つずつ選出しています。その基本単語をまずは導入し、ある程度定着したところで、それ以外の音素の特殊単語を導入しましょう。(指導1参照) 裏面には、その基本アルファベットの表示のみが記載されています。(指導2参照) (例:a……apple, art, autumnなどありますが、appleの発音だけをまずは取り上げます。)
※ 子どもたちと一緒に作るときは、子どもたちに単語を選択してもらってもよいでしょう。 その場合は、白紙カードをご利用ください。
※イラスト協力 くどうのぞみ氏:『えんぴつ1本!らくらくイラスト練習帳』(ホビージャパン)など著書をはじめ、動物や子どもたちのカットを中心に、漫画、広告、絵本などのイラストで活躍中。https://room226.jimdofree.com/
※ 特殊発音の単語カードの表面はピンクの枠、裏面は大文字の右横にピンクのアステリスク(*) がプリントされています。基本カードが定着した後で、特殊単語も交えてご利用ください。
指導1 「英単語 絵カード」の表を見せます。
先生:これなあに?
生徒:アップル
先生:そうだね。では先生の音をよく聴いて、真似をしてください。 後に続いてどうぞ。 a, a, apple (大切なことは、大げさなくらい英語らしい音を発音してあげてください)
生徒:a, a, apple
先生:a, a, apple (英語らしい音が発音されるように、数度繰り返します)
生徒:a, a, apple
絵を見たら自然に口にするくらいまで慣れることが肝要です。 この後に、文字と音の関連付けに入っていきます。
指導2 上記の活動で、イラストを見て単語が正確に発声できるようになったら、今度は裏面のアルファベットを提示して、英単語を発声します。
先生:では、前のカードに書かれているアルファベットだけを見て、表面に描かれていたイラストを思い出して単語を発声してみましょう。まずは、一緒にイラストを見て、一通りやってみましょう。 a, a, apple(上述の活動)…………
生徒:a, a, apple …………
(一通り終わったら、カードの裏面を提示します)
先生:よくできました。では、今度は、アルファベットだけを見せますから、イラストを思い出して、単語を大きな声で言ってみましょう。
(裏面のaから順番に提示していきます。まずは、クラス全体で確認しながらやります。できるようになったら、列ごと、ペア、個人と少しずつ個人の発音する場面にしていきます)
(裏面のaを提示して)a, a, apple …………
定着するまで、アルファベット順に練習します。定着したら、アトランダムに提示します。 テンポよく発声されるように、足でリズムをとったりしながら、指導しましょう。
群馬県 飯島美貴教諭による指導動画
「英単語 音合わせゲームカード」について
「英単語 絵カード」の応用で、裏面を並べて神経衰弱のように文字と絵を合わせて遊んでください。
同じ単語の絵と文字を合わせられた人は、絵カードの要領で「a, a, apple!」と読んで、カードを取ります。全部のカードが取り終えたときに、一番多くのカードを取った人が勝ちになります。
教材2「大文字・小文字発音カード(モール・フエルト・凸/凹)」「英単語ポスター」
1)「大文字・小文字発音カード」
2)「発音カードフエルト転写用データ」
3)「英単語ポスター」
「大文字・小文字発音カード」の活用説明
目 的:子どもたちがすでに慣れ親しんでいる英単語を利用した「英単語 絵カード」を使って行うことで、英語の音とイメージ連携させることができました。次のステップとして、インプットされた英語の音韻イメージ(音韻表象)に文字を同定させる活動となります。小学校1・2年生でカタカナ学習が難しかったりしたお子さんは特に、アルファベット文字の定着にも難しさが生じやすいと予想されます。ただ「見て書いて」という練習だけでは定着しづらいので、そんなお子さんには、個別指導の一環として多感覚を用いて学習できる教材の提供ができると有効であると考えます。多感覚を用いた文字指導には、「砂の上に文字を書く」「粘土で文字を作る」「指先で、カラーモールで成形された文字をなぞる」といった方法がよく使われます。ここでは、簡単に作れるカラーモールを使った文字カードと、フェルトを使った文字カードなどを紹介します。
カード作りの材料 モールカード・フエルトカード 凸凹カード
「大文字・小文字発音カード」について
教 材:大文字・小文字をベースラインの上に大きく示したカードです。両面に印刷すると表面に小文字、裏面に大文字が印刷されます。また片面印刷にし、モールカードやフエルトカードの台紙にもなります。
下記の手順に沿って、制作してください。
大文字・小文字カードの作り方の手順
① 厚手の紙に大文字・小文字発音カードのPDFをプリントアウトする
(カラーと白黒の2種の用意があります)
※モールカードやフエルトカードの台紙とする場合、少し大きめ(A4→B4くらい)に印刷する方が作りやすいかもしれません
② 小文字の書いてある紙の点線をカッターで切り離す
※片面印刷の場合、大文字カードは辺り線だけなので、切り取る前に鉛筆などで薄く線を入れてから切りましょう
モールカードの作り方の手順
① モールをなるべくひと筆で書くようにカードのアルファベット形状に合わせながら、形を作る
※小文字の場合、f, i, j, k, t, x以外は、一筆書きで作れます
※モールの切り口がなぞったときに指に刺さらないように、先端を曲げて折り返しておきましょう
② カードのアルファベット形状に沿って木工用ボンドをつける
※必ずボンドはモールではなく、カード(紙)側につけましょう
※乾くと透明になるので、多少はみ出しても大丈夫です
③ モールの上下を間違えないようにカードのアルファベットの上に置いて慎重に貼り合わせる
※モールはボンドの上に軽く置く感じで、ボンドがモールまで染み出さないように注意しましょう
フエルトカードの作り方の手順
① フエルト転写用データをコピー用紙にプリントする(フエルト転写用プリント)
※フエルト転写用データの並び順はフエルトが無駄にならないように形状に沿ってランダム表示とし「大文字・小文字発音カード」と同じ大きさで、転写のために文字を裏返して表示しています
※台紙となる「大文字・小文字発音カード」を拡大している場合は、同じ比率で拡大してご利用ください
※母音はグレーの文字、子音は白の文字です。2種のフエルトの色分けをするなどしてご利用ください
② フエルト転写用プリントを点線に沿って切り離し、張り合わせるシールフエルトを同じ大きさに切る
※予めシールフエルトに同じ大きさに切るための当たりを付けておくと良いでしょう
③ 切り離したフエルト転写用プリントとシールフエルトを張り合わせる
④ 反転したアルファベット形状に沿って切る
※「i」の上の点は、「u」の中に入れていますので、切り離した後に注意してカードに貼りこみましょう
※アルファベットの内側の空間を先にカッターで切り落とし、後からハサミでアウトラインを切ると綺麗に仕上がります
⑤ 切り離したアルファベットの紙側にボンドをつけて、対応するカードのアルファベットとずれないように慎重に貼り合わせる
※フエルト転写用プリントに下を示す印(下▼)があるので、上下を間違えないようにカードのベースラインに注意して貼りましょう
指 導:「モールカード」「フエルトカード」の指導
まずは「英単語 絵カード」の指導1の要領で声に出しながら、目を閉じて指先に神経を集中させて、カラーモール、またはフエルトの上を指でなぞります。
先生:「英単語 絵カード」で音の練習したよね。今日は、目を閉じて、指で文字をなぞりながら音と文字を結びつける練習をしましょうね。では、はじめましょう。
じゃあ、先生の後に続いて繰り返しましょう。a, a, apple
生徒:a, a, apple …………
先生:カードを「b」に変えて、b, b, bed
生徒:b, b, bed …………
先生:カードを「c」に変えてc, c, cat
生徒:c, c, cat …………
ひと通り練習ができたら、次は目を閉じた状態で、1枚のモールカード、またはフエルトカードを手渡します。
先生:では、目を閉じたまま、このカードの文字は何かわかるかな?
生徒:a, a, apple
先生:はい!正解!! よくできたね。…………
「目を閉じる」ことで、指先の触覚に神経を集中させることができ、頭の中にイメージしやすくなります。
この活動によって、自分で文字を「書く」前段階の文字の形のイメージを定着させることができます。
ヒント:今回、紹介したのは「モールカード」「フエルトカード」の2種ですが、アルファベットの形状を丁寧にカッターで切り抜けば、写真のような凸凹カードもできます。切り抜いたアルファベットをカードと同じ大きさの厚紙に貼れば凸カード、切り抜かれ残った紙を同じ大きさのフエルトに貼れば、凹カードになります。現場の状況によって工夫してご活用ください。
「英単語ポスター」について
「英単語 絵カード」の応用で、「a, a, apple!」と読んで、扉を開きます。
A3に拡大して作り教室に貼るなど、子どもたちが休み時間などに遊びながら覚えられる材料にしてください。
英単語ポスターの作り方の手順
① 厚手の紙に英単語ポスターのPDFをプリントアウトする
② アルファベットの書いてある紙の実線をカッターで切る
※破線は後で折り曲げるので、切り落とさないようにしてください
※厚紙の場合は、破線(折り線)を軽くカッターの裏でなぞっておくと、曲げやすいです
③ アルファベットと追のイラストの紙をぴったり重なるようにし、上部をマスキングテープで仮止めする
④ イラストの書いてあるグレーの「のりしろ」部分に幅6mm以下の両面テープまたは、テープのりをはみ出さないように貼る
※のりしろの位置からはみ出すと扉が開かなくなりますので注意してください
⑤ アルファベットとイラストの紙をずれないように慎重に貼り合わせる
⑥ アルファベットの扉を開く
中学生や高校生に英語学習での難しさを尋ねると、多くの学習者が「英単語が覚えられない」と回答します。ここに記憶力の問題も絡んできますが、単に情報を保持するということだけでなく、物事を記憶するというメカニズムを理解して、学習者の認知や適した学習方法に合わせた単語学習方法が使えると、苦痛である単語学習が少し取り組みやすくなるかもしれません。
記憶のメカニズムには、音韻符号化、保持、想起の3つのステップがあります。一言で「英単語が覚えられない」と言っても、実際にはどのステップでつまずいているのかをまずは確認することが必要です。
Stage3-1 英単語を音にする:音韻符号化
Stage1と2でアルファベットの文字と音素を確認しました。ここでは、オンセット・ライムを使って、さらに英語らしい音のかたまり、英語によくでてくる音のかたまりを習得し、初見の単語も読めることを目的とします。ただし、イレギュラーな読み方やサイレントレター(綴られていても発音しない文字)などは、基本が習得された後に指導します。まずは、超基本編から始めましょう。
教材1「オンセット・ライムカード」(超基本編:子音 + 母音/子音)
教 材:オンセット・ライムカード
左側にオンセット(語の始まりの子音)、右側にライム(オンセットに続く母音と残りの部分)が示されたカードです。 まず、オンセット側の音素を復習し、先生と一緒にライムの音を繰り返し練習してから、オンセットとライムの音をつなげる練習をします。
※ なるべく簡単な英単語を使用しますが、英語に頻繁に現れる音のつながりに慣れることが目的ですので、意味が分からなくても構いません。
(例:オンセットb + ライムag → オンセット&ライムbag / オンセットg + ライムag → オンセット&ライムgag)
オンセット・ライムカードの作り方の手順
① 厚手の紙にオンセットカード(16枚)とライムカード(8枚)のPDFをプリントアウトする(カラーと白黒の2種の用意があります)
② 黒の横線をカッターで切り3等分にする
※ この時点では縦線はまだ切り離さない
③ 穴の位置を確認しながら、穴あけパンチで穴を開ける(2穴のパンチも使えます)
④ オンセットカードの黒の縦線をカッターで切り離す(ライムカードの縦線は切り離さないように注意)
⑤ 穴を補強するシールをカードの裏から貼っておく
⑥ ライムカードに対応するオンラインカードを4枚ずつ上に重ねて、リングでまとめる
※ オンセットカードの右上に追のライムを表示しています
※ リングの数や位置・大きさなどは、重ねる枚数や使用しやすさによって、臨機応変にご対応ください。
指 導:オンセット・ライムカードの指導
① まず、オンセット側の音素は、Stage2の「英単語 絵カード」を使って音の確認をしておきましょう。
生徒:a, a, apple. b, b, bed. c, c, cat. …………
② 次にライムの音の確認をします。
先生:a, g, ag. 後に続いて繰り返しましょう。 ※ カードの文字を指さしながら音を出します。 a, g, ag. …………
生徒:a, g, ag. …………
正確に音が繰り返されるようになったことを確認します。
③ オンセットとライムをつなげる練習をします。
先生:b, b, bag. 後に続いて繰り返しましょう。 ※ カードの文字を指さしながら音を出します。 b, b, bag. …………
生徒:b, b, bag. …………
正確に音が繰り返されるようになったことを確認します。
④ 次のスライドに移ります。
先生:では、次はどう発音しますか?(オンセットだけ与えます) g, g, ? (生徒からgagが出てくるのを待ちましょう) そうですね。g, g, gagですね。
では一緒に繰り返しましょう。g, g, gag. …………
生徒:g, g, gag. …………
以降、同じように繰り返します。
⑤ スライドを見るだけで、生徒たち自身から発音できるようになれば完璧です!
英単語が覚えられても、「英単語の使い方がわからない」という学習者も少なくありません。日本語とは異なる英語での語句の並び方が定着するためには、どのような指導方法や学習方法があるのでしょうか?この点が第一言語である日本語が干渉する部分であろうと思われます。
教材「単語配列カード」
※イラスト協力 くどうのぞみ氏:『えんぴつ1本!らくらくイラスト練習帳』(ホビージャパン)など著書をはじめ、動物や子どもたちのカットを中心に、漫画、広告、絵本などのイラストで活躍中。https://room226.jimdofree.com/
目 的:「主語」「目的語」「動詞」が枠の色でわかる、イラストつきの「単語配列カード」で、楽しく英語の語句の並び方の学習ができます。
教 材:「単語配列カード」を切り取って使用します。白紙カードでは、オリジナルの単語で作成することも可能です。イラストが描きやすいように、背景色はなしにしています。
ことばの習得には、いくつかのステージがあります。何の困難もなく、母語の文字、音、統語などを習得し、使っている多くの人々にとって、このようなことは意識されたことはないと思います。
私は、日本語教師の免許を持っていますが、その資格を得るための勉強をしたとき、改めて日本語の文字、音の成り立ち、文法、語法などについて認識することができました。外国語を学ぶ際にも、母語と比較したり、参照したりしながら学ぶケースが多く、その度に改めて母語について認識するといったこともあるかと思います。
日本語文では、例えば、「主語-目的語-動詞」の順序で単語が並ぶのに対して、英語文では、「主語-動詞-目的語」の順序で並びます。このような単語の配列順序も、いくつかの例にあたることで、帰納的に習得できる学習者もいれば、難しさを覚える学習者もいます。
この能力は、言語学習適性(言語を習得する際に有利な能力)の一つとして考えられる能力で、「文法的センス」と言われます。文中において、ある要素がどういった働きをしているのかを感じ取る力のある学習者は、言語学習に優位であると言われていますが、一方、そういったセンスに弱さのある学習者もおり、英単語が覚えられても、「英単語の並べ方がわからない」という学習者も少なくありません。
では、英単語の並び方(統語)を理解し、伝えたいことを伝えるためには、どういった知識や能力が必要なのでしょうか?例えば、次の英文を読解する際に、必要となる知識は何でしょうか?
I saw a pretty puppy running after a big dog in the park yesterday.
「昨日、公園で、可愛らしい子犬が大きな犬を追っかけているのを見た。」
①「誰が何をした」という情報が必要であり、「私は/見た」と理解するためには、「主語と動詞」の機能知識と単語の意味知識が必要。
②「何を見た」のかの情報を得るためには、「子犬が大きな犬を追っかけている」という部分を理解するために、「分詞」の機能知識と単語の意味知識が必要。
③「どこで」「いつ」を理解するために、単語の意味知識が必要。
母国語であれば、スムーズに状況把握できる内容にも、実はこのように理解に至るまでの層があると言えるのです。理解ができたとしても、アウトプットする作業をこなすことは、なかなか難しいものです。
小椋(2007)によれば、言語発達初期の日本の子どもたちは、名詞を学習しやすい概念的な傾向を有していると研究より明らかにしています。よって、外国語の英語の場合にも、母語の言語発達に近いプロセスでの指導が、認知的負担を抱えやすい学習者には有効であると考えられます。
では、まずは、英語の名詞を使う基本的な並び方「主語+動詞+目的語」の指導例を考えてみましょう。名詞を使うのであれば、「主語+動詞+補語」も同様ですが、この場合Be動詞の種類にも留意しなければなりません。最初は、なるべく「例外がなく、単純に配列に慣れることに集中できる」活動を意識しましょう。
参考文献:小椋たみ子, (2007), 日本の子どもの初期の語彙発達,『言語研究』132号, 29–53.
指 導:「主語+動詞+目的語」編 【初級者対象】
① 以下の単語(イラスト入り)カードを準備します。 目的語となる名詞は、導入しやすいように単数としています。
② 単語カードの発音が正確にできているかどうか確認します。
先生:では、単語の確認をしましょう。先生の後について、発音してくださいね。その時、イラストもよく見て意味の確認もしてください。
では、いきますよ。 like, like (カードを提示しながら発音確認をします)
③ 基本文例をインプットします。
先生:緑のカードの中で、自分が好きなものを一枚選びましょう。
生徒:(1枚選びます)
先生:はい。選びましたか? 何を選びましたか? お隣さんに見せてあげて、英語で発音してみましょう。
生徒:(隣の生徒と確認し合います)
先生:先生の好きなものは、これです。これは英語で何ですか?(犬のカードを見せます)
生徒:dog!
先生:そうですね。では、よく聞いてください。 I like a dog. I like a dog.
(黒板に、I / like / a dog の3枚のカードを貼ります)
I like a dog. では、後に続けて言ってみましょう。 I like a dog.
生徒:I like a dog. I like a dog.
先生:(黒板に、I / likeの2枚のカードを貼り付けて)では、何が好きかお隣さんに教えてあげてください。(隣の生徒とのやり取りが終わったのを確認して) はい。では、皆さん、席を立ってください。
教室を回って5人の友達に好きなものを教えてあげてください。終わったら自分の席に戻りましょう。
——— この時点で、〇〇は、××が好きです という「主語と動詞、さらに目的語」の位置関係がインプットされます。———
生徒:(生徒同士でやりとりします)
④ 相手の発話を、主語を変えて繰り返す練習をします。
先生:(一人の生徒をあてて) What do you like? (わからないときは、You like what? と聞きなおします)
生徒:I like a cat.
先生:You like a cat. (Youと言いながら、その生徒の方に手を向け、Youが相手であることを強調します)(黒板に You like a cat. のカードを貼ります)
You like a cat. I like a dog. はい。繰り返してください。 You like a cat. I like a dog.
生徒:You like a cat. I like a dog.
先生:はい。その通りです。では、お隣さんと同じようにやりとりしてみましょう。(黒板には、You likeのカードを残します)まず、ひとりが好きなものを伝えてください。聞いたひとは、You like ……. と相手の好きなものを言ってから、I like ……. と言ってください。お隣さんと終わったら、席を立って、さっきとは違う他の友だち5人とやり取りしてみましょう。はい。どうぞ。
主語と動詞、さらに目的語がスムーズに出てくるようになるまで、慣れるように練習をします。「〇〇は、××を△△する」という基本的な単語の並びを習得します。しばらくは、名詞の語彙を増やしながら、さらに動詞の語彙も付け加えていって定着を目指しましょう。
※「白紙カード」で新しい単語を追加したり、英語教科書の巻末にある単語カードを一緒に利用しても良いでしょう。
「単語配列カード」に出てくる単語を使って、時間割表を作れる教材も配信中です。かな・漢字・英語で示すことができるので、英語のシートをご利用ください。
英語の単文を読解することができても、複文や重文、さらには長文となると難しさが深刻になる学習者がいます。長文となりますと、短期記憶、ワーキングメモリー、論理的思考力などが関係してきますが、複文や重文読解における難しさは、接続詞の明示的な指導によって軽減できる可能性もあります。特にワーキングメモリの弱さがある学習者に対して、どのような学習方法が有効なのでしょうか? ここでは、まず、簡単な接続詞を使って、短文と短文をその関係性を理解しながらつなぎ合わせる練習をとおして、より長い英文に慣れていきます。
「接続詞 スタンプカード」の活用説明
目的:
接続詞の機能と前後の単語の関係を理解し、簡単な接続詞の使い方に慣れることを目指します。
教材:
〈英単文カード〉短い英文が書かれたカード
〈接続詞カード〉
〈気持ちスタンプ〉英文の内容をわかりやすくしたほうが良い場合には以下のスタンプをカードに加え、活動をしやすくします。
接続詞例:and、but、because、as、when、so that、or ……
英単文例:学習者のレベルに合わせて、単純な状況を表す英文を準備します。
※ 活動の目的は、単文の内容を理解して、適切な接続詞でつなげることに慣れることですので、使用する英文は、単純で分かりやすいものとしましょう。
He met his old friends
He bought a new CD
She caught a cold
She got up late
She didn’t go out
We watched a movie
I was surprised
he was happy.
he was not happy.
she was at home.
she missed a bus.
we enjoyed it.
I heard the news on TV.
活動の手順
活動に入る前に、使う接続詞の意味を復習しておきます。
また、英文もわからない単語が無いように確認をしておきます。
指導1:二つの単文をつなげる接続詞を選択する練習
① 以下のように、左側と右側に英単文カードを並べます。文頭が大文字のカードが前、文頭が小文字のカードが後になるように配置します。
「さぁ、今から二つのこの英文を上手につないでみましょう。まずは、これらの英文を理解しましょう。」
② 間に接続詞カードを2枚並べ、どちらかを選択してもらいます。
「“and” と “but” どちらでつなぎますか?」
③答えを確認し、声に出して読みます。
「そうですね。“He met his old friends and he was happy.” ですね。では、後について繰り返してください。」
指導2:前の単文と接続詞につながる単文を選択する練習
① 以下のように、文頭が大文字の英単文カードと接続詞カードを並べます。「さぁ、この英文と接続詞を読んでみましょう。次にどのような英文が続きますか?」
② 次のように、後半にいくつかの英単文カードを並べます。
「二つの英文を読んでみましょう。どちらが前の英文からつながりやすいですか?」
③ 答えを確認し、声に出して読みます。
「そうですね。“She was late for school because she missed a bus.” ですね。」
まずは、and, but, becauseといった基本的な接続詞の使い方に慣れることで、単文と単文のつながりを捉えやすくします。次第にテンポも上げて、ある程度自動的に選択できるレベルまで繰り返し練習しましょう。
接続詞スタンプカードの模擬授業動画
動画で使用している、接続詞スタンプカードの模擬授業用教材サンプル(PowerPoint)も配信しています。群馬大学 飯島睦美教授が音声を入れており、 簡単にPowerPoint教材を使った実際の授業 「指導1:二つの単文をつなげる接続詞を選択する練習」を体験できます。
教材はサイト上部の「教材ダウンロードフォーム」から、ダウンロード可能です。
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教材で使用している「UDデジタル教科書体」および、欧文書体「UD Digikyo Latin」はMORISAWA BIZ+(月330円で55種のUDフォントが使用可能)のサービスでご利用頂けます。 https://www.morisawa.co.jp/products/fonts/bizplus/lineup/
また、下記の動画も新しい教材制作の参考にしてください。
「UDデジタル教科書体 欧文シリーズ」