プレゼンや企画資料で、自分の伝えたいことが伝わらなかった経験はありませんか?このコラム連載では、パッと「伝わる」ためのノウハウをツイッターで発信し、9万人以上のフォロワーを集めている『パワポ芸人』ことトヨマネさんが、パワーポイントでの資料作成のコツとフォントの関係についてお伝えします。
我々はフォントのことを意外と知らない
資料を作る際に、避けては通れないフォント選び。これまでも見てきたように、フォントは資料のわかりやすさ、印象を大きく左右する重要な要素です。
しかし私たちは、意外とフォントのことをよく知りません。やれ「Meiryo UI」だの、やれ「HGP創英角ポップ体」だの「游ゴシック Light」だのと適当に見た目で選んでいるだけで、名前に謎のアルファベットが入っていることや、微妙に似た名前のフォントが存在していることはサラッとスルーしています。皆さんは、これらのフォントの名前の意味をどのくらい理解していますか…?
まあぶっちゃけ知らなくても結構なんとかなるんですが、知っていると資料作りがちょびっと楽しくなるかもしれないので、今日はこのフォントの名前について見ていきましょう。
PとかKとかって何だ?
さて、あらためてフォントの名前をじっくり見てみます。「UDデジタル教科書体」を使ってみましょう。丸っこくてかわいらしいフォントですね。昔話を書いたりすると良い感じにフィットしそうです。教科書体というだけあって、ごんぎつねなどを書いたらバツグンにしっくりくることでしょう。
さて、この「UDデジタル教科書体」。よくよく見ると微妙に名前が違う3種類が存在しています。違いは「N」の後に「K」や「P」があるか否かです。ほとんど同じフォントに見えますが、どう違うのでしょうか。
まず、何もついていないフォントを見てみます。これは「等幅フォント」と呼ばれる種類のフォントで、すべての文字が同じ幅になっています。方眼紙に文字を書き込むようなイメージですね。
一方で、「P」が入っているフォントはプロポーショナルフォントと呼ばれます。「P」は「釣り合った」とか「均整のとれた」といったような意味を持つ”Proportional“のP。等幅フォントと異なり、文字によって異なる幅を持っているフォントです。
文字の種類に合わせて微妙に幅を変える…そんな面倒なことをしている理由は、そうした方が圧倒的に読みやすくなるからです。
たとえばアルファベットの「i」と「w」は、明らかにwの方が幅広い文字です。これを同じ幅で示してしまうと、「i」は間延びしたような印象に、逆に「w」は窮屈な印象になってしまいます。
一方で、「i」の幅を狭く、「w」の幅を広く調整すると、全体のバランスが整って読みやすくなるのです。
ちなみに「K」はカナと英数がプロポーショナルで、全角の文字は等幅になっています。サブプロポーショナルフォントとも呼ばれる種類のフォントです。
基本的に、資料を作る際はプロポーショナルフォントがおすすめです。しかし、等幅フォントはタテの線がキレイに揃うので、プログラミングなど文字数が揃うことが重要な際には便利です。時と場合によって使い分けるといいでしょう。
「UDデジタル教科書体」はWindows10以降に搭載されているフォントです。フォントメニューでは下の方にありますが是非探して「等幅」「P」「K」使ってみてください。詳細な説明動画はこちらから。
LightとかMediumって何だ?
続いて、Windowsの標準フォントであり出番も多い「游ゴシック」を見てみましょう。一口に游ゴシックといっても、意外とたくさん種類があります。
まず、日本語の「游ゴシック」シリーズから見てみましょう。これらは見た目が微妙に違うことからもわかるとおり、同じ種類のフォントのウエイト(太さ)が微妙に違うシリーズです。目的に合わせてフォントを使い分けることで、多彩な表現をすることができます。ちなみに、游ゴシックの太いバージョンである「Bold」は、無印の游ゴシックを選択してB(太字)ボタンを押すことで呼び出すことができます。フォント一覧からは選べないので注意しましょう。
また、LightとMediumはBボタンを押しても太いフォントが呼び出されないため、太字にすることができません。字のメリハリをつけたい場合は、無印の游ゴシックを併用しましょう。
モリサワのBIZ UDP新ゴなどのシリーズも、游ゴシックと同じようにBボタンで太字にできるものとそうでないものがあります。注意して使い分けてみてください。
では、英語のYu Gothic UIとはなんでしょうか?
これはWindowsのみに搭載されているフォントで、UI(ユーザーインターフェース: User Interface)という名の通り、システムのメニュー画面などで表示するために独自に開発されたフォント。狭い画面に多くの文字を記載するために、字幅が狭くなるように作られています。
上の図で紹介したBIZ UD新 C80は、このYu Gothic UIと同様に字幅が狭いフォントです。(CはCondensの頭文字)有償ですが80%の幅と60%の幅があるので、表組みが多い方には良いかもしれません。
余談ですが、游ゴシックの「游」は、「遊ぶ」ではありません。あまり游ゴシックのことを手書きで書くことはないとおもいますが、注意してみてくださいね。ちなみに漢字は違いますが意味はだいたい同じようなニュアンスらしいです。
フォントを知って一味違う資料を作ろう
フォントは知れば知るほど奥深いもの。「資料の6割は文字」を合言葉に、フォントのことを深く理解して、一味違うわかりやすい資料作りを心がけてみてください。それでは、ステキなパワポライフを!
トヨマネ(豊間根 青地)
1994年東京都生まれ。東京大学工学部卒。サントリーで通販事業のCRM・広告などを担当する傍ら、趣味のパワーポイントで作成したスライドがツイッター(@toyomane)で反響を呼ぶ。「くだらないけど、ためになる」をモットーに、スライド作成に役立つノウハウや、あまり役立たないネタ画像等を発信。 近著「秒で伝わるパワポ術 仕事でもSNSでも〈いいね〉がもらえるスライド作成のコツ」
イベントのお知らせ
6月29日から始まった11月までの連続セミナーイベント「フォントメーカーのモリサワが企画する もっと伝わるスイッチプロジェクト」では、プレゼン・広報・チラシなどの手段に応じて、より「伝わる」資料について多彩なゲストを迎えお届けします。 プレゼン資料作成につまずきのある方は、プレゼンのプロである髙橋惠一郎氏をゲストに招いたスクールがオススメです。
フォントにこだわりたい方へ
トヨマネさんの記事中の図では、ビジネス向けUD書体「MORISAWA BIZ+」に収録の有償フォント「BIZ UDP新ゴ」をお使いいただいています。同じフォントを使ってみたい方は、月額330円のビジネス向けUDフォントのサブスクリプション「MORISAWA BIZ+」でお使いいただけます。
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