『PRTIMES×モリサワ 自治体情報発信セミナー「伝える」から「伝わる」へ』と題したオンラインセミナーが、8月28日におこなわれました。内容盛りだくさんでしたが、ここではその模様をダイジェストでお伝えします。
第一部:これから必要な情報のユニバーサルデザイン化とSDGs ~地方創生とWithコロナ時代~
講師
東京都中野区広報アドバイザー / 早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
佐久間 智之氏
SNSでファンを獲得するために
埼玉県三芳町の職員として独学でデザインを学び、広報誌を手掛けてきた佐久間さん。今年2月に退庁してからは、中野区広報アドバイザーなど多彩な方面で活躍されています。そんな佐久間さんがこのセミナーで一貫して訴えていたのは、「目的と手段を見誤らないこと」。もちろん、SNSも然りです。
SNSの大きな目的は「ファンを獲得すること」であり、SNSを運用すること自体が目的となってはいけません。「しっかりファンを獲得していくために重要なのが、ゴールを決めることです」と説く佐久間さん。いいね数やフォロワー数、エンゲージメント率など測定可能なゴールを設定し、それが改善していくようPDCAを回し続ける必要があります。
またSNSで恐いのが“炎上”ですが、必要以上に炎上を恐れてSNSをしないのは本末転倒。しっかり対策を取って、安全に運用していくことが重要です。
佐久間さんは炎上を防ぐために意識したい「5つのS」を紹介しました。
・政治
・宗教
・差別
・スポーツ
・セクシャル
これに加え、次の5つのポイントを意識することも大切だといいます。
①ダブルチェックをする
②世の中の情勢と反していないか
③客観的に解釈して適切な文言・内容か
④個人情報・気密情報が写っていないか
⑤タイミングは適切か(災害時に要注意)
たとえば、災害があった直後にまちのイベントを開催すると告知すれば、住民に不信感を与えてしまいます。特に②や⑤の「タイミング」は重要で、かつダブルチェックをしながら運用することが大切です。
本セミナーの視聴者もSNSには興味津々で、早速、チャットに質問があった模様。「スポーツで炎上するとは、どういうことですか?」という質問を取り上げた佐久間さんは、次のように答えました。
「たとえば長崎県平戸市にはJリーグチームがありますが、平戸市のアカウントで職員や市長が浦和レッズを応援する投稿をすれば、住民の反感を買ってしまうでしょう。浦和レッズ戦で相手に敬意を表する場合などを除き、個人の感情を公式アカウントに投稿するのは避けるべきです」
スポーツで起こりうる炎上について、わかりやすく説明した佐久間さんは最後に「SNSでファンをつくるという目的を果たすには、情報の受け手を意識することがとても重要です」と、ファン獲得のポイントを強調しました。
第二部:パネルディスカッション ~「伝わる」自治体情報発信の実践と課題~
横浜市 文化観光局横浜魅力づくり室企画課 會田 巨享氏
いなべ市 企画部政策課 佐藤 祐孝氏
コーディネーター 佐久間 智之氏
Instagramでまちの魅力を訴求
続いておこなわれたパネルディスカッションでは、横浜市の會田さんと三重県いなべ市の佐藤さんが登壇。コーディネーターを務めたのは佐久間さんです。まずは2人がそれぞれのまちを紹介。横浜市はSUUMOの「住みやすいまちランキング2020関東版」で3年連続1位を獲得したこと、いなべ市は6割が森林で自然豊かな点などを伝えました。
次に「情報のユニバーサルデザイン化とSDGs」というテーマでディスカッションしたのち、「SNSとペイドメディア」という話題へ。
横浜市の會田さんは、観光局のアカウントに絞って話しました。横浜市は2016年、外国人向けに@findyouryokohamaというアカウントを開設。現在では日本人が約64%を占め、フォロワー数は6万人を突破しています。またインスタに投稿した写真は、6月に完成した新市庁舎のアトリウムでパネル展示したとのこと。佐久間さんもこの展示を見たそうで「壮観でしたよね」と感想を述べました。
一方、いなべ市の佐藤さんは、Instagramはまちの魅力訴求、Twitterは災害情報などの告知、LINEとFacebookはPR用と、使い分けていることを説明しました。
スピーディーに翻訳できるCatalog Pocket
有料で使用するペイドメディアとして、モリサワの翻訳機能付きアプリ「Catalog Pocket」について話す佐藤さん。導入のきっかけは在留外国人が多いためで、決め手となったのはCatalog Pocketの翻訳スピードの速さだったといいます。
コロナ禍では、休校の通知などをCatalog Pocketで配信。安全面と教育面の両立という非常に難しい判断を迫られるなか、休校決定後は即座に通知ができ、教育現場からも「助かった」との声が寄せられたとのこと。現在はモデル校を3校選定し、「学校のおたより」の外国語版をデジタル配信できないか準備中だといいます。うまく稼働すれば印刷の手間や費用の削減、容易に情報が訂正できるなどのメリットが得られます。
佐久間さんは「僕がはじめた時は5言語でしたが、いまは10言語に対応しているなど、Catalog Pocketは頻繁にアップデートされていて助かりますよね」とコメント。會田さんは「こんな便利なツールがあるんですね。すでに試してみたいと、やる気満々です(笑)」と話し、「仲間が増えそうですね。やり方をシェアできますし、お互い向上できるとうれしいです(佐久間さん)」と盛り上がっていました。
メディア露出につながるPR TIMES
横浜市の會田さんは、ペイドメディアとして「PR TIMES」を使用していることを紹介。横浜市は東京という“壁”があり、なかなか市外に情報が届かないという課題感があったといいます。それを打開しようと、PR TIMESを導入。ブランディングが目的であるため、いろいろリリースを出すのではなく、トピックを厳選しているといいます。
アート展「横浜トリエンナーレ」は視点を変えて何度もリリースを出したことで記者の目に留まり、多くの取材を受けるようになったほか、(株)ポケモンとのコラボイベント「ピカチュウ大量発生チュウ!」のリリースでは、LINEニュースに掲載されるなど“バズった”とのことです。
いなべ市でもPR TIMESを活用していて、メディアにも多く取り上げてもらっているようです。佐久間さんは「自治体限定1か月無料トライアルがありますよ!」とセミナー視聴者に呼びかけていました。
こうして充実したセミナーは幕を閉じました。大都市と自然豊かなまちという2つの市の担当者が登壇したことで、多くの視聴者にとって参考になったのではないでしょうか。