イベント

2017.06.22

2nd部会レポ:「フォントで東京を表現」ワークショップ&課題中間発表

見出し: 本文:

この日のプログラムの1つは、フォントづくりのプロによる、セミナー&ワークショップです。

1人目の話者は、株式会社タイプバンク(モリサワグループ)の書体デザイナー、高田裕美さん。書体はコンセプトに合わせてつくられていることや、その舞台裏を聞かせてくれました。

写真で部員が手にしているのは、専用方眼紙に手作業で描かれた原字。描く際には、1文字でのバランスだけでなく、ほかの文字と並んだ際に、画数・形状の違いがあっても同じ大きさ・黒みに見えるか、傾きや重心がそろっているか…などにも留意するとか。

手描きの書体は、データとしてパソコンに取り込まれ、確認・調整の工程へ。無事フォントとして世に出るまでには、再度、ほかの文字とのバランスを考慮し、数々の調整が行われるそうです。

ディレクターの仕事内容&優れた書体とはなにか?

お次は、株式会社モリサワで書体開発のディレクターを務める、富田哲良さんが登場。市場調査をもとに、つくるべきフォントを考えるところから、ディレクターの仕事はスタート。

その後、制作メンバーの選定、プロジェクトの管理、品質の管理を行うなかで、高田さんが話してくれた、書体デザインの確認・調整作業にも携わります。

例えば、同じ書体でも、バランスを考えて木へんの形状を微調整。またQのテール(2画目)は字間のバランスを考慮し、隣に並ぶ文字によって長さが異なるよう、自動変換プログラムをフォントに組み込んでいるそう。

「文章となったときに、読みやすく美しく見えるよう設計されていてこそ、優れた書体と言えるのです」と、書体づくりの奥深さを、部員たちに教えてくれました。

ワークショップも大充実 プロの指導で、レタリング!

お二人を迎え、ワークショップも大充実。コチラは「永」「音」「た」を、明朝体でレタリングしている様子。仕上げたあとはもちろん、お二人からの講評がありました。

「バランスや統一感はもちろん、ハライの切り口にも注目。骨格に対し、自然に見える角度があります。いろいろな書体の切り口も見てみてくださいね」と高田さん。

みなさんも、明朝体の特徴エレメントを参考に、チャレンジしてみてください。

書体は、何百年も生き続ける だから、書体づくりはおもしろい!

第2回部会は、「普段会うことがない、書体のプロ…」「手描きの書体が見られたのは貴重!」と、部員たちに大好評を収めて終了。

部会後には、衛藤・寺内コンビが、部活外で手がけたレタリングを持参。富田さんにアドバイスを求めていました。

「個性的なものをつくりたいだけなら、書体でなくてもいいんです。書体は統一感が大切」と富田さん。

「書体は、読みやすさ・統一感などの制約がある分、つくりづらく思えるかもしれません。そのかわり、何百年と生き続けるもの。実際に、パソコンがなかった時代の書体をデータ化して生まれたフォントもあるんですよ」

また高田さんは、書体づくりの魅力を、こう語ってくれました。

「近年、UDデジタル教科書体をつくりました。これは、ユニバーサルデザインの視点でつくった教科書体。デジタル教材で使っても見やすく、点やハライの向き・画数が明確にわかるので、文字を学ぶ教育現場でも使いやすいフォントになっています。

社会のニーズを、文字へと落としこんでいくのがおもしろい。書体づくりは、30年以上つくり続けていても、飽きることがない奥深いものなんです」

ライター:ウメザワ

1回目部会で課題が出されて、1週間。今回は、各自が構想を持ち寄りました。

【 課題 :Typograhy×東京(TOKYO)】
東京のイメージを、書体を用いて、自由な表現で作品を制作しなさい。
「日本の文字の美しさを発信」「自分が生活する街を世界にアピール」という視点で、海外の方が見ても「東京」を想起できる表現を目指す。
題材は、漢字・建物・風景・人物など自由。表現媒体も自由。
なお、「東京」または「TOKYO」の文字は、必ず入れること。

発表はひとり3分。森は、前回のセミナーで話された、駅名の表示にモリサワフォントが使われている点から発想を広げたとか。

「東京には多様なカラーの街があります。各駅名を、街の個性に合わせたフォントに変えて作品に」

また矢島は、フォントごとに得意・不得意な分野があり、フォント同士の相性がある点に着目。

「それぞれに個性のあるフォントって、まるで人間みたい。そんなことから、女性のシルエット型にフォントを並べ、東京に生きるさまざまな女性を表現しようと思いました。

例えば渋谷にいる10代の女の子を表すなら、その年代が話しそうな言葉と、似合うフォントがあるはず。文字を通して、その人物像を伝えられるんじゃないかな…と」

こんなふうに、自身が感じた“フォントの面白さ”をアイデアソースにした部員が多々。各自のテーマに合わせ、冊子、映像、プロダクト…と、表現形態はさまざまです。

心強いゲスト・下浜臨太郎さん登場

まだ中間発表ということで、「迷っている部分が…」との声もちらほら。今回は、そんな部員の心強い味方として、下浜臨太郎さんが登場!

金沢美術工芸大学卒の下浜さんは、ポスターから展示空間まで幅広く手がけるグラフィックデザイナー。ユニークな独自プロジェクトや、展覧会・地方芸術祭への出品にも取り組んでいます。

自己紹介とともに、昨年行われた「デザインの解剖展」に出品された、「ロゴタイプの拡張」(Twitterで話題になった「おいしい牛乳」積み木)が生み出されるまでの裏側も教えてくれました。

この作品は、「おいしい」の部分に50音分の積み木があり、組み合わせて好きな名前の牛乳がつくれるようになったもの。

「おいしい牛乳」のロゴは既存のフォントにも見えますが、実はデザイナーの佐藤卓氏が手がけたオリジナルタイプ。まろやかでやさしい牛乳の味に合わせ、丸みを帯びた形状になっているんです。

積み木制作では、佐藤卓氏の事務所のデザイナーさんが展開した50音の書体を使用し、下浜さんが
実際の紙パックから型を取ったりしながら、積み木をつくりあげたとか。

プロの制作秘話は、きっと、課題制作の刺激&糧になるハズ…!

下浜さんから、個々にアドバイスが

部員たちの発表に関しては、「『東京』『TOKYO』の文字を、どう入れるかがネック」と下浜さん。

「見る人に、『なぜ地名が書かれているの?』と感じさせないことが大切。『東京』『TOKYO』の文字が、必然と思える作品になるといいと思います」

配られたお弁当でのランチタイムは、下浜さんも輪のなかに。ひとりひとりの疑問や相談にも応じてくれました。

「下浜さんの指摘で、改善点が見えた!」「結構変えちゃうかも」と部員たち。課題の最終発表は、次回部会にて…。部員たちは、“フォント&東京の魅力”を我々にどう見せてくれるのでしょうか?

ライター:ウメザワ