イベント

2018.02.28

8th部会レポ:迎えたイベント「字遊自在」本番!

見出し: 本文:

ついにイベントの本番が行われた1月28日。会場は、開始前には既にイベントを期待して待つ参加者で溢れていました。熱気に満ちたイベントの様子を前後半に分けてレポートします!

この日は朝早くから準備や打ち合わせに追われていたイベントチーム。既にマガジンが完成したフリマガチームも、積極的にイベントチームの手伝いをしてくれていました。

会場に超満員の参加者が詰めかけた13時、いよいよイベント「字遊自在」がスタート!

本日のスケジュールやフォントスイッチプロジェクトの説明、イベントに込めた思い、ゲストの大原大次郎さんと関川航平さんの紹介を終えると、早速ワークショップへ。

集まったばかりでまだ緊張している参加者に対し、大原さんが「ワークショップは手を通して考えることで、これから僕たちが話す言葉が入りやすくなります。頭をほぐすためにもまずはやってみましょう!」と声をかけてくださいました。

イベントチームの司会進行で、まずは各テーブルのグループごとに、入り口に並べられた素材の中から好きな道具を選んでいきます。素材は葉っぱやフルーツ、お菓子、爪楊枝、貝殻、洗濯バサミ、ヒモ、ネジなどあらゆる種類のものが揃います。

さて、これからどんなワークショップが始まるのでしょうか。

「文字って面白い!」大盛り上がりのワークショップ

そして各テーブルに戻り、席に置かれた紙とペンを使って手を動かしていきました。1枚目の紙にはペンで普段通りに自分の名前を記入、2枚目以降の紙には利き手とは逆の手を使ったり、目をつぶって書いたり、隣の人の背中を使ったりと、さまざまな手法で名前を書いていきます。隣の人とコミュニケーションを取りながら、ヘンテコな文字が完成していくのが面白く、参加者たちは笑顔で楽しんでいました。

次に、「選んだ道具にペンをあてて名前を書いてみよう」という指示が。大原さんによると、「普通に書いた時、方法を変えた時、道具を変えた時でそれぞれ何が浮かび上がってくるのかを試しましょう」とのこと。参加者は道具をいろいろな角度から観察しながら、どんな扱い方をすれば文字を書けるのか試行錯誤していきます。

洗濯バサミの角度によって文字の質感が変わることに驚いたり、バドミントンの羽とペンの使い方を工夫して何パターンもの文字の書き方を試したり、ネックレスのチェーン部分の扱いに苦戦したり、松ぼっくりの表面を紙にこすりつけて文字を浮き立たせてみたり。参加者による自由な発想でたくさんの文字のアイデアが生まれていきました。

やわらかい道具で上手に文字が書けない参加者を見て関川さんからは「名前を書くことに意識するのか、道具を使うことに意識するのか、という違いで文字のバリエーションが出ると思いますよ」というアドバイスも。その話を聞き「漢字でも書いてみよう」「自分が道具を扱って書いた時と他の人が扱って書いた時の文字の違いも面白いかも」など、参加者たちが意欲的に文字の可能性を探っていく姿がありました。

隣の人と道具を交換したり、完成した紙を見せ合ったりすると、「この文字すごく可愛いね!」「なんかダイイングメッセージみたいに見える」「同じ道具を使ったのに全然違う文字になる」と、各テーブルからさまざまな感想が飛び出します。イベントチームも参加者が円滑なコミュニケーションができるように各テーブルを回っていきました。

最初に普段通りにペンで名前を書いた紙と比較してみると、自分の筆致のクセが道具によって制限される面白さを発見する場面も。参加者たちは道具を使って手や体を動かし、アイデアを考えながら文字を書くことで、普段では体験できない文字の魅力を感じていたようでした。

参加者の新鮮な反応や出来上がった文字を見た関川さんからは「軽石のゆったりしたカーブで動きが現れたりネックレスをふわっと紙の上に置いてペンで押し当てたりして書いた文字が、道具から『書かされている』という受動的な感じがしてすごく良いですね。道具とのやり取りによってできる加減やグラデーションの中にたくさんの発想があります」との感想が。

数多くのワークショップを手掛ける大原さんも「今日のワークショップには、一人で黙々と作業するだけでは感じられないダイナミックさや隣の人の気配、息遣いを感じられました。今日のような体験は継続していくと時間の変化の面白さや新たな発見ができるはず」とまとめていただきました。

後半では、お二人の貴重な話が聞けたトークの内容をお届けします。

前半では、盛り上がりを見せたワークショップの模様をお伝えしました。後半では休憩後に行われた大原さんと関川さんによるトークセッションや交流会、フリマガチームによるマガジン配布の様子をお届けします。

今日のワークショップを通じたお二人の貴重なトーク

お待ちかねのトークセッションでは、今日のワークショップの総括から、お二人が作品作りやデザイン、ワークショップなどで抱いている根本的な狙いや考え、お二人の仕事紹介、最近の関心事まで、多岐に渡るお話が繰り広げられました。

さらにトーク後半では、大学で文字やデザインを学ぶ参加者たちにプロとしてのアドバイスも。大原さんからは「仕事をしていくとデザインとはこうだ、仕事を受けたらこう作る、というルーティーン化が決まってしまいます。また、一見無駄なものや遠回りに感じることは社会では排除されてしまう。今日やったことはデザイン事務所で求められていないことだけど、自分の中で実践できるワークショップを日常化する努力をすれば、表現の感覚や人に伝えるスキル、面白さへの気付きに長けてくるはず」と参加者たちにエールを送ってもらいました。

関川さんからも「大学時代の作品作りは、『周りもやっているし、美大にいるんだから』という意識になりがち。素晴らしい環境があるからデザインをするというのは、手段と目的が逆のように感じます。自分で泥臭くワークショップやもの作りを繰り返してほしいです。デザインの目的に立ち返った時、デザインできる環境があるからではなく、もう少し遠い目的や設定に引っ張られるようにして自分でもの作りの方法を試していってください」と、デザインやもの作りを行ううえで意識しておきたいことについて伝えてもらいました。

大原さんは「文字やフォントを作る人たちは、文字だけなく自然物や人間の感情などさまざまなものを見ていると思います。そういった目は日常の修行で養われていくけど、養われていない状態でただ真似が上手になると、大事なことが見えなくなってしまう怖さがあるよね」と関川さんの意見に同調。

デザインや文字だけにとどまらない濃厚なトークが繰り広げられ、参加者は時折メモを取りながら真剣に耳を傾けていました。

最後にはお楽しみの交流会や質問コーナー、マガジン配布も

最後は、お菓子や飲み物を楽しみながらの交流会。参加者たちは互いに自己紹介や大学の話などすっかり打ち解けていました。また大原さんと関川さんが参加者からの質問に答えるコーナーも。

「学生時代はどんなことをしていたのか」という質問に対し、関川さんは大学3年生の時に作った作品の話を披露。「一人でプロレスを行うパフォーマンスでした。途中で急に照明が変わったり僕も動きを止めたりして時間が止まったかのような瞬間を作ったんです。そこでお客さんが感じる『え、なに?』『どうしたの!?』といった沈黙や緊張感を作りたかった。そういった『人間や物事には、なぜこんなことが起きるのか』という問いを解いてみたいという思いは当時からあったと思います」と、今の作品作りに繋がるエピソードを話してもらいました。

大原さんは中高の友達が今の仕事に繋がったのだとか。とある友達がコラージュCDを出すことになり、そのCDジャケットに手掛けたデザインが、大原さんが高校生にして初めてのデザイン仕事だったのだそう。その後にちゃんと美術の勉強をしようと美大に入学。「あの時の友達がいなかったら今の自分はここにいないかも」と感慨深そうに振り返ります。

そのほかにも最近ハマっていることや作品を伝える時に考えていること、仕事で煮詰まった時の解決方法など、ここでしか聞けない貴重なお話に盛り上がり、イベントは大盛況のうちに終了しました。

最後には配布されたマガジンをフリマガチームが説明。「干物」のコンセプトやマガジンに込めた思い、写植に関する記事の紹介や今後の配布予定など、初めて人前で自分たちのマガジンを解説するこの時間は、フリマガチームも緊張感に包まれていました。手元のマガジンを手に取り、興味深そうに見つめていた参加者たち。今後は第1号となった今日の参加者から、読者が多くの学生たちへと広がっていくことが期待されます。

最初のワークショップで空気がほぐれたことで、最後まで和やかで楽しい雰囲気に満ちていたイベントになったこの日。笑顔で帰って行く参加者を見て、イベントチームも安堵の表情を浮かべていました。

こうして無事に成功を収めた第2期モリパス部。今後はイベントチーム、フリマガチームそれぞれの個別インタビューも掲載予定なので、そちらもお楽しみに!