研修・セミナー

2021.04.27

一般社会法人 子ども・青少年育成支援協会 村中直人先生インタビュー

見出し: 本文:

一般社会法人 子ども・青少年育成支援協会 代表理事
村中直人 先生 (臨床心理士)

Q1. どんなお仕事をされていますか?

「発達障害サポーター’s スクール」という発達障害の支援者向けのスクールの運営と講師をしています。発達障害の子どもたちの学習支援の事業にも関わっていますが、そこで感じるのは支援者の不足です。一人でも多く発達障害について知識や理解のある支援者を育てて社会に貢献したいとの思いがあります。

Q2. 昨年、『ニューロダイバーシティの教科書』を出版されましたが、どんな思いからこの本を書かれたのでしょうか? 

書籍『ニューロダイバーシティの教科書』
著者:村中直人/出版社:金子書房/2020年発行

発達障害支援の色々な情報を学んでいく中で、「ニューロダイバーシティ」という概念に出会いました。
「ニューロダイバーシティ」は、20年ほど前に生まれた新しい概念ですが、「一人一人には違った脳や神経の特性や特徴があり、その特性や特徴を相互に尊重し合える、活かし合える社会にしていこう」というメッセージが含まれています。元々は自閉スペクトラム者の方たちが提唱した概念ですが、そこに意味されることは発達障害に限らず、全ての人に言えることだと理解しています。

本を出したのは、その「ニューロダイバーシティ」という言葉が日本では知られてなく、それをわかりやすく解説した本もなかったことにあります。言葉自体は海外の方が日本より浸透していると思いますが、主に発達障害の就労支援で使われることが多い印象です。海外に習うというよりは、日本では「あらゆる人を対象にした概念」として、広めていきたいと思っています。

また私自身は、この日本版「ニューロダイバーシティ」という概念を普及させたいという思いがあり、一昨年に始めた「サポスク・ゼミ」を引き継いで、この4月から「ニューロダイバーシティ・ゼミ」を開催しており、支援者を中心に教育、医療、心理、企業など多くの様々な分野の方が興味を持って参加されています。

ニューロダイバーシティ・ゼミの説明スライド
「BIZ UDPゴシック」が使用されている

Q3. フォントのスイッチが、“ON”になった瞬間は?

今まではフォントに対して無頓着で全く気にしていなかったのですが、モリサワの方と出会ってUDフォントの話を聞いたことから、スイッチが“ON”になったと感じています。子ども向けの教材の書体やプレゼンスライドなどのフォントを意識するようになり、積極的にUDフォントを使うようになりました。

自分でも読みやすさを感じています。私は極端な聴覚情報処理優位で視覚的な情報にはあまり敏感ではないのですが、不思議なもので、一度スイッチが“ON”になると、生活の中で自分が普段使っている UDフォントにも瞬時で気付くようになりました。また、世の中の印刷物やスライドを見て、「うわっ、読みにくい!」と感じるようになり、今までは「読みにくさ」にも気付いていなかったんだな……と気付かされます。きっと与えられたことが当たり前になっていると、実は読むために無意識にエネルギーと時間と労力をかけて読んでいたことが、フォントによる読みやすさを一度体験すると、読みにくさを感じて読みにくいものが嫌になるんだと思います。

Q4. よく使うモリサワのUDフォントとそのご利用シーンはなんですか?

コロナ禍で、紙ではなくオンラインの画面越しに文字を見せながら話をする機会が急激に増えました。同じサイズでもフォントによって文字の大きさや印象が異なって見えてフォント選択の大切さを意識するようになりました。私は大人向けの学びのプレゼンをすることが多いので、そのスライドには、パッと目に入り大きくすっきりとした印象の「BIZ UDPゴシック」をよく使います。

Q5. 今回、子どもたちのひらがな学習を応援する教材で音響の監修をしていただきましたが、どんな思いで取り組まれましたか?

本来、文字の学び方には色々な方法があって然るべきですが、そのごく一部のやり方に頼りすぎていることに課題を持っていました。「何度も繰り返し書いて覚える」方法が教育現場では定着していることが多いように思います。それは、努力の量が見える化しやすいということもあるでしょう。ですが、そこからこぼれてしまう認知特性の子や書くことに困難さを抱えている子にとっては違う方法が良いかもしれません。今回、ご相談を頂いたときに、他の方法を提示できる一つのツールになると思い、お手伝いさせて頂きました。

教材は「ボーカロイド」と「クラリネット」ベースの2パターンあります。
「ボーカロイド」は、絵描き歌のように、例えば「あ」なら、「よ〜こ、た〜て、ななめくるりんしゅ♪」と書き順を示しているもので、音声に敏感で物事を順番に覚えていくことが得意なタイプの子にとっては、すごく合うやり方になるだろうと思います。ボーカロイドの声は、可愛く愛嬌があり、親しみやすい感じに仕上がっています。
※ ひらがな筆順表(ボーカロイド)指導者用  を提供しています。

「クラリネット」は、音の高低が空間を表していて、横線は音程が変わらず、縦線は音程の高低に変化があります。音で文字の位置を示しているので、書いて覚えるのは苦手だけど視覚的なイメージで情報を取り入れることが得意なタイプの子の補助として、目と耳の多感覚を使って文字をイメージでき、曲線の多いひらがなの学びに合うのではないかと思います。

両者共にすごく良い教材になったと思いますが、前提として、こちらの音響の部分は全ての子どもに必要というわけではないと思っています。今回のようにツール化して提供しておくと、その子に合うかどうかを気軽に試してみることができるので良いことですが、この教材を使う先生や保護者の方は、この教材がどの子にも良いのではなく、一つのやり方として捉えて欲しいと思っています。

言い方を変えると、この方法をクラスの子どもたちに紹介してもらうことで、色々な学びの選択肢があることを子どもたちに知ってもらえる、「繰り返し書いて覚えること」が苦手な子だけでなく、そつなくできる子でももっと楽に学べる、もっと合う学び方を見つけられる可能性もあるのでは?と思います。

選択肢の一つということは、フォントにも同じことが言えて、一人一人の感覚や特性が違うように誰にでも合う完全なフォントや教材はなく、色々なフォントや学びの方法があり、自分に合うフォントや学び方を選択できることが大切ってことですね。その選択肢の一つとして、この教材をクラスで楽しく、あるいは家で遊びながら、試してもらえると嬉しいです。

教材提供/教材写真&サンプル動画 掲載

インタビューの中に出てくる音声教材(PowerPointデータ)とプリントして使える「ユニバーサルデザインかなカード」は、下記からダウンロード可能です。
PowerPointデータは、ご自身のパソコン上にダウンロードし、スライドショーで音響が再現できます。55~59MB相当のデータ量があるので、空き容量に注意し、ダウンロードに時間がかかりますことをご了承ください。かなの動画の配信も検討中です。

音響協力 畑圭 氏:PA(サウンドエンジニア)舞台・イベントなどの音響、テレビや配信の音声などを手掛ける。戦略論を学び、アドバイザー的な立ち位置での支援を趣味とする。

【PowerPointデータ】
ひらがな学習応援素材1-1(あ〜そ)_Vocaloid
ひらがな学習応援素材1-2(た〜ほ)_Vocaloid
ひらがな学習応援素材1-3(ま〜ん)_Vocaloid
ひらがな学習応援素材2-1(あ〜そ)_Clarinet
ひらがな学習応援素材2-2(た〜ほ)_Clarinet
ひらがな学習応援素材2-3(ま〜ん)_Clarinet

【PDFデータ】
ひらがな筆順表(ボーカロイド)指導者用
ユニバーサルデザインかなカード(スタート点付き)カラー / モノクロ
ユニバーサルデザインかなカード(スタート点なし)カラー / モノクロ

左図:ユニバーサルデザインかなカード(スタート点付き)カラー 
右図:ユニバーサルデザインかなカード(スタート点なし)カラー 

Q6. これからチャレンジしたいこと、興味のあることは?

先に話した「ニューロダイバーシティ」の発想はいろんな場面で適用できる考え方なので、より多くの人に知って貰い、その実践者を増やしていきたいと思っています。人の脳や神経の特徴によって学び方も、働き方も、生活のあらゆる場面で障害の枠組みを超えて、それぞれの人に合ったやり方があるはずです。ニューロマイノリティな方たちだけが対象なのではなく、日本からの発信であらゆる人を対象にし、一人一人のことをもう少し丁寧に理解し、お互いを尊重し活かし合える社会を作っていこうというテーマを掲げて、「ニューロダイバーシティ」を実践していきたいと思っています。

Q7. これからモリサワのUDフォントに期待することは何ですか?

書体一つにしても、自分で選択する意識が高まって皆が自由に選択できるのが当たり前になることが素敵だなと思います。個人的にはパソコンやタブレット、携帯などに誰もがマイフォントを選択できるような仕組みがあるといいなと思います。

そんな仕組みができると、皆さんのフォントのスイッチも“ON”になりそうですよね!
私たちもUDフォントを通して、「ニューロダイバーシティ」の考えに沿って、それぞれの子どもたちの学びに合ったフォント選択の大切さを普及していけるように頑張りたいです。

村中先生、インタビュー および、ひらがな教材の監修にご協力頂き、ありがとうございました。