インタビュー

2018.01.15

東京藝術大学 槇野 結さん・大岩 雄典さんインタビュー

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東京芸術大学
槇野結(まきのゆい)さん 
大岩雄典(おおいわ ゆうすけ)さん

Q. どんな制作活動をしていますか?

槇野さん

学部生の時から松下先生の研究室でグラフィックデザイン(特に本、ポスターがメイン)を勉強していて、院生になってからもビジュアルデザインをメインで制作しています。

大岩さん

デザインと美術、両方の領域に関心があります。デザインの手法も活かしつつ、作品は映像をよく作っています。

Q. フォントの感性が“ON”になった瞬間

槇野さん

高校生の時、所属していたダンス部で、公演の時にチームの紹介を載せたチラシ作りを担当していました。でも当時は文字に種類があるなんて知りませんでしたし、チーム名や紹介文もすべて手書きでした。だけど、もっと良くしたいと思うようになって、チームの特色を書体で表現しようと思ったんです。校の時、ダンス部の広報に所属していて、当時は文字に名前が付いているなんて知りませんでした。
広報での仕事では、チラシも最初は手書きでした。だけど、もっと良くしたいと思っていて、ダンス部にあるチームの特色を書体で表現したいと思ったんです。
でも、どうしたら良いかわからなくて、ジャニオタの友達にウチワの文字はどう作っているのか聞いたら、フリーフォントを印刷して切って、貼っている。と聞きました。

ただ、フリーフォントを検索してみたら、ひらがなだけのものが多くて、しっくりこなかったんです。それで、行き着いた先が有料フォントのサイトでした。でも、高くて買えなかったので、AからZまでスクリーンショットを撮って印刷し、自分で切り貼りして紙面を作りました。

その時に、印象に合わせて書体を変えることを初めて体験して、書体って大切だと気付きました。

今振り返ってみると、それが“ON”になった瞬間だったと思います。

大岩さん

中学生のころ、隣の席の子の書く字が妙に丸文字だったんです。他にも、角ばった文字や、それぞれ手書きの文字に癖があるな、と思ったんです。
遊び半分で、色んな人の文字を真似して書いていたら、だんだんその癖がうつってきちゃって。いろんな字が自然と書けるようになってきた。絵が得意だから、そういうのも上手かったのかもしれません。
いわゆるフォントではないけれど、そういう意味で、書体への感性はなんとなくあったのだと思います。

Q. 好きなモリサワフォントとその理由

2人とも

リュウミンです。

槇野さん

特にかなの形が好きです。
学部生の時に、趣味でひらがなをエレメントごとに切り分けて再構成し、読めそうで読めそうにない文字を作っていました。その時に、いろんなメーカさんの書体を試したのですが、パーツパーツを繋げた時一番綺麗だったのが「リュウミン」で、以来好きなフォントのひとつとして使わせていただいています。

大岩さん

大学でスライドを作ることが多いのですが、内容が伝わりやすいフォントを選ぶようにしています。

リュウミンは、ふくらみがあって、ゆったり読める印象になると思います。

Q. あなたから見た、この学校の先生って?

槇野さん

松下先生や藤崎先生に限らず、学校外での交流(飲み会)が多く先生と学生の距離感は近いです。

院生になってからすごく怒られたことがあって、その時に、「僕は君たちをプロと思っているんだよ。だからプライド持って取り組んでよ。」と、言われました。

松下先生には1・2年生の時は名前も覚えてもらえませんでしたが、その時、ようやくその理由がわかった気がします。

院生はデザインの勉強を始めてもう5年目。学部生と違って、もうデザイナーとしての意識を持つ練習をしなければならないんだと。

普通、先生というと「僕の持っているものを君たちに教えてあげよ」という、スタンスや距離感ですが、芸大の先生は、「僕と君は、同じ分野にいる同じ能力を持っている仲間であり、経験があるかないかの違いなんだ。」と、だから厳しく接してくれる。

とても、ありがたいと思えましたし、いい学校だと思います。

大岩さん

藤崎先生は、「わかってくれない」人です。……ポジティブな意味で(笑)。

芸大の課題で作る作品には、個人の感性がそのまま反映される部分があるので、論文が間違っているのとは違って、無下には否定できないところです。
藤崎先生は、「わからない他人」の立場から、ねばりづよく作者の意図や関心をしっかりヒアリングしてくれます。

その目線から、良くないところにはきっぱりと指摘をいれてくれるので、ありがたい存在です。

Q. スイッチが「OFF」になる瞬間

槇野さん

制作が1つ終わったときです。

秋頃に東京アートブックフェアのデザインに関わらせて頂いた時は、いつお風呂に入って、ご飯を食べて、寝ればいいの!?と思うような忙しい生活でしたが、、それが終わった後は、1週間くらい絵に描いたようなヒドイ生活を送っていました。

大岩さん

スイッチが完全に切れてしまうような瞬間は、、あまりないかな……と思います。

スイッチというよりは「ギア」のような感覚です。人前でプレゼンをしているときは10や9にギアが入っているけれど、家で休んでいるときも、2、3くらいONのままになっている。

作品を制作しているときのほうが、集中していないときさえあります。

Q. これからチャレンジしたいこと、興味のあること

槇野さん

広告の仕事に興味があって、そちらの仕事に行きたいと思っています。

広告という媒体はフォントやタイポグラフィーの知識がない人の多くに見てもらえるから、書体の知識は大切だと思っています。

松下先生にはまだまだ届かないけれど、学生のうちに書体の選択によって変わる印象を理解したいです。

大岩さん

デザインの中だけでなく、むしろデザインから縁遠い分野にも興味があります。
さまざまなところから、知見をもってきた制作ができればと思っています。