2022.11.28

【連載】よくわかる!組込みフォント 第5回「書体を知ろう。」

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はじめに

組込みフォントの基礎知識や用語などを解説していくブログ「よくわかる!組込みフォント」をスタートします。今回は書体についての解説と、書体を検討する上でのポイントをまとめました。

書体(Typeface)とは

共通した表情をもつ文字の集まりのことです。和文書体は「リュウミン」「新ゴ」など、共通のコンセプトによって作られたものを指し、それぞれ「明朝体」「ゴシック体」のように大きく分類することができます。

字体と字形

書体を検討する際によく聞く言葉として「字体」「字形」があります。
JIS X 0208:1997の『7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化漢字集合』では、字体を「図形文字の図形表現としての形状についての抽象的概念」、字形を「字体を、手書き、印字、画面表示などによって実際に図形として表現したもの」として定義しています。具体的には「字体」は文字の点画から成る骨組みであり、それを表記した文字の形が「字形」となります。

和文書体

ゴシック体

ゴシック体はすべての画がほぼ同じ太さに見えるようデザインされた書体です。もともとは活版印刷の定着とともに、見出しなどでの強調を目的に生まれた書体です。欧文のサンセリフ書体にならってデザインされたともいわれます。
視認性が高く、操作画面などのUIやさまざまな案内表示に適しています。

明朝体

明朝体の源流は、中国の宋の時代(10世紀)に盛んになった木版印刷で使われた書体で、毛筆の楷書体を模していました。例えば、横画の右端にある「うろこ」と呼ばれるアクセントや、一つの画の中での微妙な太さの差などにその名残りを見ることができます。
現在の明朝体は、明治の初めに日本にもたらされた金属活字を基礎に改良が続けられてきたもので、さまざまな表情を持った明朝体が製品化されています。
可読性が高く、電子ブックや説明文など長文の表示や印刷に適しています。

筆書体

漢字の祖国、中国では、長い書の伝統の中からさまざまな書が生まれました。代表的なものに「篆書」「隷書」「行書」「草書」「楷書」があります。これらの書(書体)を印刷のうえでも表現するために、さまざまな筆書体が作られてきました。
また、日本で江戸時代の町民文化から生まれた「勘亭流」や「寄席文字」「髭文字」などの伝統的な筆文字、明治の初めに使われはじめた「教科書体」など文化や社会の流れの中から生まれた筆書体があります。
伝統的な手書き風、年賀状など印刷用アプリや日本的なイメージの製品に適しています。

デザイン書体

写植時代が全盛を迎えた70年代以降は、印刷技術やメディアの変化に伴って書体もグラフィカルな進化を遂げました。同じ頃から、組みイメージを容易に変えられる「かな書体」も多く作られています。
明朝体とゴシック体の両方の特徴を持つ書体や、はっきりとしたイメージを打ち出した書体、デザイン的に工夫された書体、微妙なニュアンスを表現した書体など、さまざまな表情の書体がデザインされています。
さまざまなデザインがあり、利用者のターゲット層や世界観などイメージに合わせたいアプリやゲームに適しています。

ユニバーサルデザイン書体(フォント)

ユニバーサルデザインとは、米国ノースカロライナ州立大学のユニバーサルデザインセンター所長であったロナルド・メイス氏らが提唱した「あらゆる人々にとって使いやすいデザインである」とする考え方で、その考えに基づいて作られたのがユニバーサルデザイン書体です。

ユニバーサルデザイン書体(UD書体)

ユニバーサルデザインの考え方に基づいて作られた“誰にでも読みやすく分かりやすい”モリサワのUD書体です。UD書体は下記の3つのコンセプトから生まれ、第三者機関での視認性・可読性の検証を行った、一般書体と比較して明らかな優位性が認められた書体です。
各種情報表示製品、特に公共性の高い案内表示製品やさまざまな製品のUI表示に適しています。

UD書体の3つのコンセプト

・文字のかたちがわかりやすいこと
・文章が読みやすいこと
・読み間違えにくいこと

UD書体の特徴

Uni-Type

ユニバーサルデザインの考え方に基づいて作られたビットマップフォントです。
UD書体同様、第三者機関での視認性・可読性検証を行い、優位性が認められたビットマップフォントです。
操作パネルやモバイル端末などスペックや解像度の低い製品のUI表示に適しています。

UDデジタル教科書体

デジタル教科書をはじめとした ICT教育の現場に効果的なユニバーサルデザインの教科書体です。
筆書きの楷書ではなく硬筆やサインペンを意識し、手の動きを重視。教科書の現場に準じた書写に近い骨格にしました。
書き方の方向や点・ハライの形状を保ちながらも、太さの強弱を抑えたデザインで、ロービジョン(弱視)、ディスレクシア(読み書き障害)に配慮しました。
2020年度からの学習指導要領に合わせて出された、文部科学省の英語教材の字形に準拠しています。
デジタル教科書や教育用アプリ・配信サービス、教育関連製品などに適しています。

コンデンス書体

標準書体に比べて、予め横幅を狭く設計した長体の書体です。
限られた領域にできるだけ多くの文字量を表示・印刷したい場合「文字サイズを小さくする」「文字間や行間を狭くする」「ソフト的に変形する」などの方法しかありませんでしたが、こういった方法は視認性・可読性を著しく低下させます。コンデンス書体は視認性・可読性を損なうことがないよう横幅を狭くデザインした書体です。
スマホやタブレット、モバイル端末、成分表示や注意書きなどの表示や印刷に適しています。

グローバル書体

各言語を同じユニバーサルデザインのコンセプトによって設計した統一感のある書体です。
設定機能で表示言語を切り替えてもユーザーインターフェース画面のイメージは変わりません。
複数の言語表示が必要なインバウンドやグローバル市場向けの製品・サービスに適しています。

言語毎に書体を集めた場合、太さや形状に統一感がありませんが、グローバル書体は統一感があり、多言語対応の組込み製品に最適です。



書体を選定する際は、以下の内容をご確認ください。

利用製品【例】デジタルサイネージ
利用目的【例】案内表示
利用者【例】不特定多数
年齢層【例】全年代
対象言語【例】日本語、英語、中国語、韓国語
利用環境【例】OS、パネルサイズ、解像度、階調数、表示サイズなど

※利用環境については、よくわかる!組み込みフォント 第1回「まず、フォントを知ろう。」を参考にしてください。


今回の書体の解説は以上になります。
ご質問などがあれば直接メールにてお問合せください。

問合せ先:pas@morisawa.co.jp

次回は「さまざまな利用方法」について詳しく解説いたします。
本連載は次回が最終回となります。
よろしくお願いいたします。