インタビュー

2025.02.28

「伝わる」広報で町を活性化させたい。町民が愛着を持てる町をめざすため今できること 神奈川県箱根町 「伝わる」資料デザインプログラム

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箱根町 企画観光部企画課広報情報係 主事 勝俣 崇作さん

今回のインタビューは箱根町企画課の勝俣さん。
箱根町は神奈川県の南西部に位置し、東京から約80キロメートルの距離にあり、北は南足柄市、東は小田原市、南は湯河原町、西は静岡県3市2町と接する、全国でも有数の観光地でもあります。

2024年にモリサワ主催のセミナーに参加された勝俣さんから管理職に向けた広報勉強会を行いたいという依頼を受け、モリサワが勉強会の企画から運営まで協力させていただきました。
どのような課題や目的をもって勉強会実施に至ったのか、またこれから箱根町が目指す町としての姿や未来に向けた思いについて、お話を伺いました。

この記事はこんな方におすすめ
  • 広報改革をしたいが、何から始めたら良いかわからない
  • 全庁的な広報力強化を目指したい
  • 広報戦略を全庁に浸透させたい

若年層にも町に興味をもってもらうために

  Q.箱根町が勉強会を実施した背景や現在おかれている状況や課題について教えてください

勝俣さん:現在の箱根町の主力情報発信媒体は広報紙ですが、主に新聞折込で送付しています。つまり、新聞離れをしている若者世代に行政情報をどう届けるか、検討・工夫しなくてはならないと思っています。
しかし、当町の情報発信は“興味を持ってもらい実際に行動してもらうため”ではなく“情報を掲載しているだけ”に近い意識・感覚があることが課題で、もっと情報を届ける意識(広報視点)があれば、幅広い世代に興味・関心を持ってもらうことで情報が届くと思っています。

全職員が広報担当である意識を持ちたい

勝俣さん:広報についてさまざまな見直しを行っているタイミングでモリサワのセミナーに参加し、広報担当者として新たな視点を庁内に共有していこうとする中で、ひとりで発信し、まんべんなく共有するのには限度があると感じました。
そこで、職員一人ひとりも広報担当であるという意識を持ってほしいという思いからモリサワの勉強会を庁内で実施したいと考え、協力を依頼しました。私も初めから広報意識や視点があったわけではなく、さまざまな研修を通して培ったので、意識が芽生える良い機会にして欲しいと思いました。

決裁権者の広報意識の醸成、各課で指導し合える環境づくりのために

  Q.今回の勉強会はいかがでしたか?勝俣さんが感じた変化などはありましたか?

勝俣さん:今回は決裁を行う管理者向けの勉強会としました。目的としては2つあり、一つは管理職の広報に対する意識を高めることです。
公務員の特性なのか必要な情報は限りなく掲載する=見る気がそがれてしまうような広報物が蔓延している現状です。しかし、管理職の広報に対する意識が高まれば、各担当から新しいレイアウト、興味を持ってもらうための斬新なデザインを提案した時に、色々な表現を議論できるようになります。
もう一つは前例踏襲型の広報物を見直し、各課において指導しあえる体制を整えることです。
実施後、たくさんの職員から反響がありました。研修を受けた99%の方から「有意義であり、ぜひ、担当者向けの研修も行ってほしい」と反応があり、受講者にとって満足度の高い勉強会となりました。
担当者向けの「『伝わる』資料デザインプログラム」研修は実施に向けて調整中ですが、近い将来で必ず実施し、庁内の広報意識の醸成と、その先の住民に対して「伝わる」情報発信ができるようにしていきたいと考えています。

モリサワ:伝わる情報にこそ意味があることや、少しの工夫や視点の持ち方でどなたでも「伝わる資料」を作れるようになることを、管理職の皆さまにも体感していただく大変良い時間となりました。貴重な機会をいただきありがとうございました。

箱根町作成の通知文をもとに、モリサワ講師が「伝わる」を意識した資料にリメイクbefore/after

市町村アカデミーの研修会での学びを庁内で共有

  Q.これまでどのような取り組みをされたのですか?

勝俣さん:私はこれまで「広報はこねの掲載の手引きの作成」と「記事提出フォーマットの刷新」を行いました。広報担当となった当初、若者ウケを狙った広報紙を作りたいとか色々と願望はあり、これまでの箱根町の広報紙にはない表紙を考えるなど小手先でなんとかしようと思っていました。デザインが変われば若者も読んでくれると思っていて、今思うと単純な考えでした(笑)。
そんな中、全国の広報担当者が集まる市町村アカデミーが開催する研修に参加して、箱根町は「広報戦略」が無いなと研修を通して気が付き、広報戦略を庁内で発信・共有することで劇的に変わるのではないかと思いました。

「広報はこねの掲載の手引き」の作成と、定着の難しさ

勝俣さん:そこで研修終了後、早速箱根町版の広報戦略や発行の意図やルールなどを示した「広報はこねの掲載の手引き」を庁内に共有しましたが、なかなか浸透せず焦りを感じていたところにモリサワが開催した元埼玉県三芳町佐久間さんの研修に参加しました。
研修の中で記事を掲載するための提出フォーマットを定めたと聞き、箱根町でも取り入れようと思いました。「広報はこねの掲載の手引き」で示している重要なこと(掲載意図を記載してもらうなど)を提出用のフォーマットに落とし込めば、手引きを読まなくても意図が伝わると思い「提出フォーマットの刷新」を行いました。導入して間もないですが、既に効果を感じています。
今後もより良くするために手引きや提出フォーマットの更新と、「伝わる」情報発信術を身に着けるための研修会を行い、少しずつ「庁内に広報意識を定着させる=各種サービスやイベントの情報が伝わることで住民が行動・参加してくれる→その行動が地域の活性化」に繋げていきたいと思っています。

良い事業も対象者に伝わらなければないものと同じ
住民に還元するためには、情報を届けることが大変重要な役割

  Q.これからどんな箱根町を目指したいですか?未来に向けた思いを教えてください

勝俣さん:全国的にも少子高齢化が進んでいますが、箱根町においても例外ではありません。そのため町としても若者の移住・定住に向けた施策や、子育て世帯の負担を軽減する施策など、さまざまな取り組みを行っています。
ただ、上記に限らずこうした町の取り組みがしっかり伝わるべきところに伝わっているのかは疑問に思います。
どんなに役立つ良い事業を行っていても住民や関係者が知らなければ無いものと同じです。住民に還元するためには、きちんと情報を届けることが義務であり、大変重要な役割です。
箱根町は観光面に関しては全国的に有名で情報も多いのですが、一方で暮らしの面では、他の市町村に引けを取らない施策があるにも関わらず町内外に伝わりきっていないように感じています。
情報発信の先に地域活性化があると感じているので、広報紙からできることを進めています。

住民を巻き込み、全ての媒体で連動した情報発信を目指したい

  Q.今後、箱根町で取り組んでいきたい地域ブランディングの事案などがございましたら教えてください

勝俣さん:具体的には模索中ですが、広報紙に限らず、HP、SNSなど情報発信に関わる多くの媒体で意識を変えて、すべてを連動させた情報発信をしていきたいと思っています。
町の事業やイベントなど情報を必要とする住民にしっかり届き、町に興味や愛着を持ってもらう・住民を巻き込むことで、地域の活性化や移住定住に繋がるシティプロモーションとなり、ひいては町が抱える課題の解決につながっていくと考えています。

モリサワ:はじめてモリサワ主催のセミナーでお話を伺った際に、市町村アカデミーの研修会での衝撃から、約2カ月で「広報はこねの掲載の手引き」を作成し、庁内に展開した勝俣さんの行動力に驚き、ぜひ皆さんにもシェアしたいと思いました。忙しいことを言い訳にはせず、「やると決めたらやる!」勝俣さん。
強い思いで作成された「広報はこねの掲載の手引き」をどう浸透させていくか、ご苦労されている中で私たちの研修をご紹介する機会がありました。今後も情報発信全体の連携に向けて一緒に走っていけたらと思っています。
将来的には住民を巻き込んだシティプロモーションを目指していきたいとのこと。
箱根町の住民が、自分の住む町に愛着をもち、住み続けたいと思えるまちづくりを、私たちモリサワもフォントを通じてお手伝いが出来ればと考えます。

お知らせ

広報力アップ研修! 「伝わる」資料デザインプログラム

わたしたちモリサワは今年度より、公共団体、学校職員・教職員、企業向けに、『伝わる』資料デザインプログラムとして資料作成研修をはじめました。
フォントメーカーによる、資料作成術を分かりやすくロジカルに解説し、センスだけに頼らない資料作成のスキルアップをサポートする研修プログラムです。
自治体事例もあわせて、詳しくはコチラをご覧ください。

地域ブランディングを強化する自治体制定フォント

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