2022.08.23

【連載】よくわかる!組み込みフォント 第2回「アウトラインフォントを知ろう。」

見出し: 本文:

はじめに

組み込みフォントの基礎知識や用語などを解説していくブログ「よくわかる!組み込みフォント」第2回目は、ウエイト、スケーラブルフォント、フォントレンダリングエンジンやフォーマットといった「アウトラインフォント」についての解説をまとめました。

アウトラインフォントとは

字形の元となる座標データとそれを繋いだ直線や曲線データで構成されたフォントです。 利用環境や使用する大きさによりますが、拡大・縮小してもきれいな文字表示・印刷が可能です。
例えばTrueTypeフォントやOpenTypeフォント、ATMフォントなどのように、現在、PCなどで表示するフォントのほとんどはアウトラインフォントです。

文字の輪郭をデータとして持っているためさまざまな書体デザインが可能です。

ウエイト

フォントの“太さ”のことを「ウエイト」と呼びます。フォントの中には、数種類のウエイトが用意され、「ファミリー」を構成しています。
「ウエイト」の役割は、文字や文字サイズに応じて使い分けることで、より伝わりやすくなります。

ウエイトは書体によって異なることがあり、モリサワの新ゴ書体の場合「EL」「L」「R」「M」「DB」「B」「H」「U」の極細から極太までの8ウエイトがあります。
書体によってはウエイトの数、表記方法が異なりますが、書体名の後ろにウエイトを表記するのが一般的です。
モリサワではフォント名を以下のように表しています。

フォント名には、ウエイトの他に、採用している文字セットを表記することもあります。セット毎に搭載文字数が異なり文字セットの違いを判断することができます。
※文字セットについては「よくわかる!組み込みフォント:第4回の文字セットと文字コード」で詳しく説明する予定です。

スケーラブルフォント

字形のデータを直線や曲線の座標値(ベクターデータ)として持ち、拡大・縮小しても表示・印刷の品質が劣化しにくいフォントの総称です。アウトラインフォントや前回ご紹介したストロークフォントもスケーラブルフォントに含まれます。

フォントレンダリングエンジン

フォントレンダリングエンジンはスケーラブルフォント(ベクターデータ)をビットマップグラフィックス(ラスターデータ)に変換するためのモジュール(特定の機能を実現するためのプログラム群)です。表示装置やプリンタは点の集まりで表現しているためフォントレンダリングエンジン(ラスタライザー)は必ず必要です。

WindowsやMac、Linuxなど汎用OSはフォントレンダリングエンジンが入っていますのでTrueTypeなどの汎用フォーマットのフォントデータのみで表示や印刷が可能ですが、組み込み製品では環境的に汎用OSが使えない場合があります。
その場合は組み込み用のリアルタイムOSを使うのですが、リアルタイムOSはフォントレンダリングエンジンが入っていないため、フォントデータとフォントレンダリングエンジンをセットで製品に組み込む必要があります。

階調

フォントレンダリングエンジンがラスターデータに変換する際、階調数(色や明るさの表現の段階数)を指定します。階調によって文字の品位も変わってきます。
例えば2階調は背景色と文字色の2段階(2色)で表現しますが、256階調では背景色と文字色を含む256段階の階調情報(アンチエリアス:背景色と文字色を段階的に変化)で滑らかな文字の表現も可能です。

モリサワでは利用環境や用途に合わせ最適なフォントレンダリングエンジンをご用意しております。

  • RT++ Engine:高速で高品位な出力を可能にした軽量のアウトラインフォント
  • MobileFont:データ用量を抑えた軽量のアウトラインフォント
  • KS Engine:データ容量がアウトラインフォントの1/10程度の軽量ストロークフォント

フォーマット

アウトラインフォントのフォーマット(規格)には標準的ないくつかのデータ形式があります。TrueTypeやOpenType、PostScriptフォント(Type 1フォントやCIDフォント)、Web利用ではWOFF(Web Open Font Format)などが代表的です。
フォントレンダリングエンジンを利用する場合、それぞれ専用フォーマットのフォントデータが必要となります。

組み込み利用

●汎用OS(Windows、MacOS、Linuxなど):TrueType、OpenType
  各種ハードウェア製品、アプリやゲームなどで利用。
●リアルタイムOS(μITRON、T-Kernelなど):フォントデータ+レンダリングエンジン
  計測機器、各種産業・医療用製品、ハンディ型デバイスなどで利用。

利用環境

フォントレンダリングエンジンの搭載をご検討の際は、以下の内容をご確認ください。

OS【例】μiTRON
CPU【例】ARM11 500MHz(500MHz:クロック周波数、CPUの処理性能を表す数値)
   ※クロック周波数が低いとレンダリング(画像生成)処理も遅くなります。
ROM【例】10MB(データの保存可能容量)
   ※搭載する書体や言語によって必要なデータ容量は変わります。
メモリ容量【例】4GB(レンダリング処理に使えるワークメモリ容量)

今回のアウトラインフォントの解説は以上になります。
ご質問などがあれば直接メールにてお問合せください。

問合せ先:pas@morisawa.co.jp

次回は「ビットマップフォント」について詳しく解説いたします。
よろしくお願いいたします。