インタビュー

2019.02.01

多摩美術大学 岡本健先生インタビュー

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多摩美術大学 統合デザイン学科
岡本健先生

Q.どんな授業を担当していますか? 

統合デザイン学科の3年次から選択できる「エディトリアル演習」という授業です。統合デザインならではのエディトリアル、つまり書籍に限らずパッケージ、プロダクト、インターフェース、空間など、さまざまな環境下で必要となる文字情報の整理整頓について教えています。

チラシの裏面やパッケージの成分表示、展覧会の会場キャプションなど、装飾的な表現ではなく、文字だけで構成された情報をレイアウトし、受け手にとって読みやすく正確に情報が伝わるものを作るための、技術や見識を養うことに重点を置いています。

Q.フォントの感性が“ON”になった瞬間 

もともと私は文学部出身で、卒業後グラフィックデザイナーとして働くためにアルバイトを転々としていたのですが、ようやく正社員として会社に入った時、初めて自分のデスクと専用のパソコンをあてがわれました。そこに様々なフォントがたくさん入っていて。それらを自由に使って良いんだと、その種類の豊富さに感動した記憶があります。

Q.好きなモリサワフォントとその理由 

太ゴB101」です。書体に大きなクセがないこと、また従属英数字がキレイな点が使いやすく、ウェイトの種類はないものの、1書体を使って万能に組めるのでよく使っています。

僕の授業では、1年間の授業を通して1書体しか使ってはいけないというルールを設けています。今の学生にとって、フォントの選択肢ってあまりに多すぎると思うんです。ちょっと使ってみただけではその書体のクセやトーンの理解は深まりません。そのため、1書体で文字組のしやすい「太ゴB101」のを1年間徹底して使ってもらっています。

Q.先生から見たこの学校の学生って? 

他の学校の学生を見たわけではないので比較検討ができないのですが、デザイン全般に関して造詣の深い学生とそうでない学生の差がすごく激しいと感じます。

もう1つは統合デザイン学科の宿命とも言えるのですが、かなり広い範囲でデザインにまつわる様々なことを学ぶので、職業選択を決定する時期がどうしても遅くなるんですね。就職活動のスタートが遅れて進路を決めかねる状況になってしまうのは心配な点です。

本来であれば統合デザイン学科で学んでいることは、デザイン業務だけでなく一般職でも役立つものですが、まだまだ社会の受け皿は小さいと思います。その状況もまた、「自分の本当にやりたいことってなんだろう?」「自分に合う会社ってどこだろう?」と学生を悩ませてしまっているのだと感じます。

Q.スイッチが「OFF」になる瞬間 

OFFはないかもしれません。体質的にスイッチをOFFにするのが下手なタイプで……。肩凝りがひどい時に整体に行っても「頭が動きっぱなしで体がずっと強張ってる」と言われることが多く、スイッチをOFFにするのは課題でもあります(笑)

Q.これからチャレンジしたいこと、興味のあること 

教育面に関して言うと、今やっている授業を他の学校などでも教えてみたいですね。その対象は大学生ではなく高校生でも中学生でも良い気もしています。様々な世代で教えてみたいです。

また、仕事においては「どう働き、どう営みを続けていくか」ということに興味があります。
有難い事にスタッフを雇って仕事ができている環境の中で、スタッフや私自身が豊かになる働き方について探求していきたいです。例えば働く日数を週休3日にするなど、労働環境の常識を一度疑ってみたら面白い働き方ができるんじゃないかなと考えています。

さらにチャレンジしたいのは東京ではない場所に拠点を作ること。スタッフやスタッフの家族も自由に使えるような場所があれば、事務所、自宅、もう1つの拠点と三角形ができて、新しい循環が生まれるんじゃないかなと模索しています。