【行方市フォントプロジェクト】[その2]　未来を担う子どもたちと考える「行方市フォント」～小学生向けワークショップ編～

茨城県行方市は市制施行20周年を記念し、モリサワと連携して制定フォントを選定する「行方市フォントプロジェクト（行方市制定書体プロジェクト）」を実施。2025年7月～8月に行方市職員と市内小学生とのワークショップを通じて候補を挙げ、中学生の投票によって2025年9月に決定しました。

「制定フォント」は、広報物や名刺などの行政発信に活用され、行方市の独自性を内外に示すブランド要素の１つとなります。本記事では、第二弾となる「小学生向けワークショップ」の様子をご紹介します。

【行方市フォントプロジェクト　決定までのプロセス】

市職員向けワークショップ（7月）：市の職員が「行方市らしさ」を考え、制定書体の候補を検討
小学生向けワークショップ（8月）：行方市内の小学生が文字デザインに触れ、候補書体から模擬投票
中学生による投票（9月）：市内中学生の投票によって制定書体を決定

行方市フォントプロジェクト（その１）～行方市職員向けワークショップ編～

「行方市制定フォント」を市民と一緒に考える

「制定フォント」は、組織のアイデンティティを統一し、外部に一貫したイメージを伝えるための強力な手段です。行方市が取り組んだのは、単なるフォント選びではありません。世界の都市（シカゴ・ドバイなど）でも、統一的なフォントの利用はシビックプライドを育む取り組みとして注目されています。このプロジェクトの真の目的は、「行方市らしさ」を言語化し、行方市民一人一人が納得できる、持続可能なブランド運用の土台を築くことにありました。

今回の行方市フォントプロジェクトでは、行政側が一方的に決めるのではなく、市民と一緒に選ぶことを重視するため、市の未来を担う子どもたちにも参加してもらいました。そして、フォントの面白さに触れるワークショップを通じて「行方市らしさ」を感じられる制定フォントを考えました。

【小学生向け制定フォントワークショップ】

もじでつくろう行方のポストカード

第１部　同じフォントを探そう

第２部　行方市を紹介するポストカード作り

第３部　行方市の“もじ”をみんなで考える

第1部　同じフォントを探そう

はじめの挨拶では、モリサワという会社の紹介と、行方市との関係についてお話ししました。そのなかで、「フォント」という言葉をどのくらいの人が知っているかを聞いてみたところ、半数近くが手を挙げてくれました。

ここで改めて、文字の形の種類を「書体」や「フォント」と呼ぶことや、世の中には何万種類ものフォントがあることを紹介。学校の教科書やマンガの題字、ゲーム機などにモリサワのフォントが使われていることを話すと、多くの子どもたちが驚いていました。

フォントのことをもっと身近に感じてもらうために、同じフォントを探すワークショップを実施。「新ゴ」というフォントの「な」を探してもらいました。この字には、3画目と4画目が繋がっている特徴があります。

子どもたちは早速、作業テーブルに用意された文房具や配布物を手に取り、細かい文字にまで目を凝らします。新ゴの「な」を見つけられたかを尋ねてみると、たくさんの人が元気よく手を挙げてくれました。

フォントの違いってなんだろう？

続いて、文字の形の種類が違うと、どんな印象の変化があるかを体験してもらいました。

例題として挙げたのは、幼稚園くらいの女の子のシルエットと一緒に書かれた、6種類のフォントの「ありがとう」です。絵に合うフォントを聞いてみると、かわいさやあどけなさを感じるものに手が多く挙がりました。次に、フォントの種類はそのままに、絵だけを80歳くらいのおじいちゃんに変更。すると、筆で書いたような上品なフォントが選ばれました。

フォント選びに正解はありませんが、同じ言葉でもフォントが変わると、伝わる印象が大きく異なります。そのため、フォントは「声」とも言われます。