
クラウドサービスやSaaSがビジネスの基盤となりつつある現代において、企業が顧客と向き合う場面は多様化しています。特にIT業界では、システム導入の提案から、その後の運用、改善に至るまで、あらゆるフェーズで資料が不可欠な「コミュニケーションツール」となってきています。
日本電子計算株式会社の証券事業部では、証券業界向けに証券総合サービス『OmegaFSシリーズ』をご提案し、運用およびサービスを提供されています。同社の証券事業部門に所属する30名の方々に、モリサワの「伝わる」資料デザイン プログラムを受講いただきました。今回、事業企画部の森英康部長、証券サービス統括部の本多隆晃様、証券営業統括部の半田太我様に、「伝わる」資料デザイン プログラム研修で得た学びとその後の社内の変化についてお話を伺いました。
事業紹介:お客さまとのつながり方の変化に柔軟に対応
ー 日本電子計算株式会社 証券事業部のお仕事内容を教えてください。
森部長
証券事業部のお客さまは、証券会社様はもちろん、投資信託を取り扱ったり直接販売されている会社(銀行も一部お客さま)もいらっしゃいます。共同利用型なので、お客さまごとに論理的スペースをセキュアに分割してサービス運営し、ネット上からご利用いただいています。それぞれお客さまごとに必要なサービスを契約しご利用いただいております。
最近では証券業界も異業種からの参入が多いですが、長年培った知識や経験を駆使し、最短で導入しやすい仕組みを構築できる点が当社の強みかと思います。また共同利用型サービスではありますが「こういう使い方がしたい」といったご要望にも柔軟にカスタマイズ対応しています。証券会社も、対面取引される会社様からネット完結の会社様までさまざまな利用ケースとなり、いわゆるBtoBtoCの形態のサービスとなることもございます。
証券事業部の職種構成は役割分担型となっており、「営業」「事業企画」「開発(2統括部)」「運用・基盤」「品質管理」の5部門で構成されていますが、今回の取材は「開発の本多」「営業の半田」「企画の森」の3名で取材対応いたします。

導入の背景:部門間の壁を超える「コミュニケーションツール」としての「伝わる」文書の重要性
ー 今回、「伝わる」資料デザイン プログラムを受講いただいたきっかけをお聞かせください。
森部長
2月26日(水)に開催された、モリサワ主催のオンラインセミナーの受講がきっかけでした。「フォントメーカーがなぜ、このような内容のセミナーを?」という意外性に興味を持ちました。
研修を受けてみようと思ったのは、お客さま満足度調査の結果などから「提案・説明資料がお客さまにうまく届いていないのでは?」という声が挙がっていたことがきっかけでした。私たち証券事業部では、営業、事業企画、開発、運用・基盤、品質管理のすべての部門がお客さま向けの何らかの資料を作成し提供しています。そこで、外部の専門性を取り入れるべく研修を検討しました。フォントのプロフェッショナルであるモリサワから直接レクチャーいただける点が大きな魅力でした。
ー 営業部門がご提案時に作成する資料だけでなく、運用開始後、日々の運用でも継続して、わかりやすい資料をお客さまへ提示していかなければならないという事ですね。実際に開発部門の本多様もお客さまの前でお話しされたりすることがあるのでしょうか?
本多氏
はい、お客さまへ資料を作成し説明することが仕事の一部となっています。
そういった説明の場は、ユーザー会といった形で隔月で実施しているのですが、開発目線での資料作りとなってしまうとお客さまには伝わらないので、お客さま目線の資料作りを心掛けています。この部分はいつも難しい点の一つだなと感じています。

半田氏
私は営業なのでユーザー会では司会進行をしています。会の終了後はお客さまごとにフォローアップに伺い、開発や運用チームがプレゼンした資料をさらに噛み砕いて伝えるという事が営業の仕事となっています。

ー 開発部門と営業部門でのお客さま資料の連携についても気を付けなければならないのですね。
研修内容と学び:「伝わらない」資料を徹底解剖。自社の弱みを客観視する
ー 今回受講いただいた研修において、モリサワから「提案資料の悪い見本」を提示し、ディスカッションを行いました。その際に何か気づきなどありましたでしょうか?
半田氏
1枚の資料に対して、どこが伝わりづらいかを2名一組ずつで発表したのですが、15組全員すらすらと被らず指摘されて、たった1ページ分の資料なのに15個以上もの違和感が出てくるものだと、それだけ改善のしようがあったり、上手く伝えるべき点があったという事に驚きました。業務上、資料作成は限られた時間の中で効率よく作成するものです。また資料を違う部門の方々と意見を出し合うという事は、あまり実施しない事ですので、部門ごとに違う視点があるのだと新鮮な気づきもありました。
ー その後ユニバーサルデザインフォントの説明やレイアウトのポイントなど座学を中心に約1時間お話し、実際に
PCを使った課題制作を実践しました。当日の研修で印象に残った言葉や制作手法などありましたら教えてください。
本多氏
制作手法の中で「色はなるべく抑える」という事は聞いたことがありましたが、文字視点の説明(行間を取る、揃えるなど)はとても印象に残りました。
半田氏
私も「ジャンプ率」と「ウエイト」という用語を学びました。文字サイズを大きく、太くといった言い方ではなく、そういった「理論」があって伝わりやすくなっていくのだという気づきを得ました。今後仲間にも伝えていきたいと思います。
森部長
以前はビジネス企画や「交渉力」を養う研修など、さまざまな研修を実施してきましたが、このような制作系の研修は初めてでしたので、自社の制作物の良し悪しを考えるきっかけとなったかと思います。
日本電子計算株式会社 証券事業部
"Communicative" Document Design Program
【第1部 グループワーク】
「提案資料」を提示し、2名一組でディスカッションし、受講者のみなさんより「伝わりづらい」と感じる箇所を発表。さまざまな気づきを感じていただきます。


「吹き出しが見にくい」「この文言は何を指すのか?」など、さまざまな意見が上がった
【第2部 講義】
第1部で受講した「伝わりづらい」と感じた資料の記憶がまだ新しいうちに、「伝わる」資料とはどんな点に注意すればよいのか? UDフォントとは? などなど、「伝わる」資料作りのためのスキルをレクチャーしていきます。


【終了後の課題制作を宿題として提出。後日アドバイスシートを返却】
研修中に制作が完了しなかった課題制作は、期限までに提出します。
その後提出いただいた課題を添削した「アドバイスシート」を返却し、今後のスキルアップ資料として見返していただきます。

その後、講師から添削された資料「アドバイスシート」(中央下)
ー 座学終了後、実際に課題制作の宿題を提出。後日モリサワより添削されたアドバイスシートを返却しました。その点はいかがでしたでしょうか?
本多氏
普段意識しない部分も考えながら作って、結構自分の中で納得いくものができたと思っていたんですけれども、アドバイスシートで改善点を教えていただきました。
半田氏
「ジャンプ率」や「行間」の取り方、余白の使い方が綺麗になったと褒めていただきました。逆に元の資料は全然意識していなかったので、改善する点がいっぱいあるんだなと感じました。
研修後の成果:顧客との対話が「要件確認」から「未来の議論」へ
ー この研修終了後、提案資料など作成されましたでしょうか? 周囲からの反響がありましたでしょうか?
本多氏
これまで当社では、お客さまからの要望をヒアリングし、それを整理した上で要件定義資料としてご提示してまいりました。従来は、その資料の内容に関する質問が多く、面談時間の大半を資料説明に割いておりましたが、研修以降は資料そのものへの質問が減り、要件定義に関するご質問が増えてきたように感じています。
半田氏
私は開発部門が作成したその資料を後日お客さまへ説明に伺うのですが、資料の中で「大きい文字で表現」したところが開発が伝えたいポイント、注目部分だという事が解るので、要点をかいつまんで説明しやすくなりました。より要点を抑えたご案内ができるようになりましたので、お客さまの理解度も向上したのではと感じています。
今後の展望:現場から広がる「伝わる」資料を作成するためのプラスの連鎖
ー セミナーを受講後、ご自身の周囲の方々への接し方や働きかけに変化はありましたでしょうか?
本多氏
以前会社内で「パワポ塾」という資料作成向上のための有志の会が存在していました。各部門の方々も「伝わる」資料をお客さまへ届けたいという気持ちを持っていたのだと思います。このような気持ちを持っている、研修を受講していない方々へもこのスキルを届け、さらに広げていきたいと感じました。
半田氏
受講していない方の資料を見た時に色々と感じるようになったので、アドバイスができるようになりたいと思います。
ー 受講された方が学んだ内容を受講されていない方々へ共有されたり、提案資料を提出前に確認し合ったりすることで、社内の提案資料のクオリティーが向上することを期待しています。
ー 最後に私たちモリサワに今回の研修を通じて、さらなる要望などありましたら教えていただけますでしょうか?
森部長
資料デザインの作成は、センスや向き不向きだと思っていましたが、スキルであるという事がとてもよく理解できました。今回の研修の満足度も97%ととても高く、実施して良かったと感じた研修でした。
本多氏
資料の見た目は重要だなと感じました。見た目が崩れていると、内容の理解度が下がってしまい、せっかくの資料がもったいないなと感じます。
半田氏
今までの資料作成のクオリティーですと「伝え方」が良くなかったのかなと。これからは「伝わる」資料を作成することで、お客さまとより良いコミュニケーションができるよう心がけていきたいと思います。
ー 本日はお忙しいところお時間いただきましてありがとうございました。今後の提案資料や制作物の品質向上に期待しております。
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