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2026.02.27

三重県いなべ市|人材育成と連携を継続して育む地域ブランディング――行政と民間が共に取り組む「伝わる」シティプロモーション研修

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いなべ市 「伝わる」シティプロモーション研修会

三重県いなべ市では2019年度に全ての職員PCへUDフォントを導入し、広報紙やWebサイトに加え、通知文や申請書など日々の業務で活用しています。あわせて、広報物をより「伝わる」形にするための職員向け研修も実施してきました。

さらに、市内小中学校のタブレット端末にもUDフォントを採用し、子どもたちにも「伝わる」資料づくりの考え方を伝えています。こうした取り組みを通じて、「伝わる」情報発信の土台を築いてきました。

しかし、地域の情報発信の担い手は行政だけではありません。そこで今回は、いなべ市の魅力を日々発信する市内の事業者を巻き込んだ「シティプロモーション研修会」を企画。「伝わる」情報発信を実現するための講義や、官民の立場を超えた意見交換を実施しました。人を育てることを通じて地域全体の情報発信力を高め、地域ブランディングにつなげる新たな取り組みをご紹介します。

官民の多様な情報発信を「伝わる」地域ブランディングへ

「いなべ市広報戦略基本方針」に基づき情報発信力強化を目指すいなべ市とモリサワは、2020年1月に包括協定を締結。双方の人材や資源を活用しながら、地方創生の推進や関係人口の創出などを目指して、さまざまな取り組みを行ってきました。

その具体例の一つとして、職員一人ひとりが「伝わる」情報発信を実践できるよう、モリサワによる研修も定期的に開催。これまでに多くの職員に参加いただき、UDフォントの効果的な使い方や資料作成のコツなどを共有してきました。受講者はその後、まだ受講していない職員に研修の学びを広げるなど、庁内に好循環が生まれています。

三重県いなべ市 | Userʼs Voice | フォント製品 | 製品/ソリューション
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こうした取り組みによって「伝わる」情報発信の土台が形成される一方で、新たな課題が見えてきました。それは、地域の情報発信の担い手は行政だけではないという実情です。そこで今回は、市の職員だけではなく、いなべ市が取り組んでいるまちづくり事業『グリーンクリエイティブいなべ』の関係事業者の方も対象に広げて、市外・県外へ向けた発信力を磨く「シティプロモーション研修会」を企画。市の魅力をより「伝わる」表現で発信できる人材育成を通じて、地域全体の情報発信力を高め、地域ブランディングにつなげていくことを目指しました。

研修を通じて生まれた変化

受講後の変化について、受講された方に伺いました。

受講者 H氏

受講前は「伝わりやすい型」や「技術」を意識していましたが、受講後は相手の目線に立ち、「人起点」で伝え方を考えるようになりました。
フォントやレイアウトも単なるデザイン要素ではなく、相手への配慮そのものだと捉えられるようになったことが大きな変化です。

受講者 Y氏

文書を作成する際の意識が大きく変わったと感じています。研修を受講する前は、やみくもに自分の発信したい情報を文書に詰め込んでいましたが、受講後は文書に落とし込む前に、自分が本当に伝えたいメッセージはいったいなんなのか、それによって相手にどうしてほしいのか、自分のなかで整理をするようになりました。整理することで文章や文書のレイアウトも考えやすくなったと感じています。

また、「地域ブランディング」とは何か、今回の研修やフォントがどう役に立ちそうかについても伺いました。

受講者 Y氏

すでにある魅力的な行政サービスや地域での取り組みを市内外にいかに普及させ、売り込んでいく手法を考えることが地域ブランディングであると考えています。
市役所に勤めてから行政のさまざまな分野において画期的な取り組みがなされていることを知りました。しかしながら、その事実を知らない方々も多くいらっしゃるので、今回のような外部への発信という点に重点をおいた姿勢が求められていると思います。

行政上の少し理解が難しい制度の内容を幅広い年代の皆様にお伝えしなければならない場合や、部署内で情報共有をしなければならない事項を伝える際に、文書にて発信することがほとんどなので、そういった際にフォントや今回の研修が活かせるI feel that way.


受講者 H氏

地域ブランディングとは、新たに特別な資源をつくることではなく、地域の日常にあふれた価値を「魅力」として捉え直し、自らの言葉で伝えられる人を増やすことだと考えています。

異なる立場の参加者が「伝わる」を軸に、地域について考える時間を共有できること自体が価値であり、その積み重ねがシビックプライドを育み、発信者を増やす力になると感じました。

フォントや情報設計は、届けたい相手に合わせて本質を整理し、正しく伝えるための土台だと感じています。
資料作成や企画提案、日常のコミュニケーションを含め、「何を、どの順序で伝えるか」を設計することが、相手の理解や共感を高める鍵になると実感しています。


今日から実践できる「伝わる」資料の作り方

今回のシティプロモーション研修会のゴールは、「『伝わる』を知り、今日から実践できる状態にする」ことを通じて、地域ブランディングの推進に活かしていただくことにあります。そのため、知識のインプットだけに留まらないよう、「講義→実践→フィードバック」という三段階のプログラムを設計しました。

【シティプロモーション研修会!相手に伝わる資料の作り方講座】
 1. 「伝わる」とは何かを理解する
 2. 「伝わる」ビジュアル作成のノウハウを学ぶ
  • サンプル資料を使って意見交換
  • 情報の構造化
  •「伝わる」ビジュアルに必要な要素の解説
 3. 実践:課題のリメイク作業
  • 自前 または サンプルデータでリメイク
  • 途中経過データを発表
 4. 質疑応答

▲リメイク前のサンプルチラシ
改善点について受講者同士で意見交換を行いました

前半の講義では、まず「伝える」と「伝わる」の違いを明確にしました。地域ブランディングの情報発信では、送り手の物差しで一方的に「伝える」のではなく、受け手のことを考えた「伝わる」表現が重要になります。情報発信の本質は、受け手がその内容を正しく理解し、何らかの行動を起こす点にあるからです。

次に、「伝わる」ビジュアルを実現するための手法を紹介しました。特に重要な点として、「伝わる」という状態を理解したうえで、5W1Hをもとに情報を構造化し、伝えるべき要素の優先順位を整理することを紹介しました。

情報の構造化に続いて、具体的なノウハウを紹介しました。例えば、UDフォントを選ぶ意味や効果的な使い方をはじめ、「文字サイズ・ウエイト」の調整方法、適切な「行間・字間」の設定などを丁寧に解説。さらに、フォントや色の数に関する目安、余白の取り方にも触れ、日常業務ですぐに活かせる実践的なテクニックを共有I did.

さらに後半の実践パートでは、参加者に実際に手を動かしていただき、課題資料のリメイクを行いました。研修後には、その成果物をモリサワへ提出いただき、専門的な視点から添削コメントを記した「アドバイスシート」をフィードバックしました。一方通行の講義で終わらせるのではなく、実践と振り返りまでを含めた学びの設計が、本研修会の大きな特長です。

地域ブランディングの担い手が同じ場で学ぶ意義

異なる視点の発見

「サンプル資料を使った意見交換」のパートでは、職員と事業者の混合グループをつくり、いなべ市における地域ブランディングの土台づくりにお役立ていただけるよう、官民それぞれの視点から意見交換を行いました。

「同じビジュアルを他業種の方と一緒に見て、自分とは違う考え方に触れられたことに価値を感じました」
「似たような分野で連携して情報を出すと、受け取る側もわかりやすいのでは」
「情報の目的や優先順位を整理したうえで、より伝わる表現について話し合えました」

参加者の立場が異なるからこそ生じる視点の違いが、互いの気づきを深めるきっかけに。その結果、レイアウトに関する具体的な指摘や、情報発信の目的そのものを問い直す議論が行われ、さまざまな改善アイデアが飛び交っていました。

学びを実践するリメイク作業

研修前半で学んだ「伝わる」情報発信のノウハウに加え、多角的な視点によって得られた気づきは、後半のリメイク作業で具体的な成果として表れていました。
数人の受講者から途中経過を発表いただき、他の受講者への新たな気づきにもなりました。

国民健康保険の高額療養費制度に関する案内をリメイクした方は、改善のポイントを次のように振り返っています。

発表者:「内容に対して少しでも理解を深めていただくために、まずは冗長な文章を削りました。そのうえでフォントを明朝体からゴシック体に変更し、見出しサイズを16ポイントに。高齢者の方も読まれるので、本文は12ポイントで整理しました」

リメイクされた案内は、情報の優先順位が明確になり、ひと目で申請方法や手順が把握できる構成に。紙面にメリハリが生まれ、理解しやすい仕上がりになっていました。

また、イベントチラシをリメイクした方は、受け手の視点をより具体的に掘り下げていました。

発表者:「ターゲットを『いなべ市在住のファミリー層』に設定したうえで情報を整理しました。個人的にこうしたチラシはキャッチコピーが重要だと考えているので、できるだけ目を引くタイトルを検討しました。まずはターゲット層に興味をもってもらうこと、そして参加してもらうための情報を見やすい位置にまとめました」

相手を思う立場からタイトルを変更し、優先順位の高い情報をZ型にレイアウト。研修の学びが凝縮された、より「伝わる」チラシに生まれ変わっていきました。

人を育てることが地域を育てる 主催者の佐藤氏にも伺いました

今回の研修について、また、地域ブランディングについてのお考えを教えてください





いなべ市
農林商工部商工観光課
佐藤 祐孝氏

今回の研修で、行政・民間どちらにも共通の悩みがあるのだということを共有できたと感じました。情報発信の必要性は理解しながらも、他の業務に圧迫されて思う様にできない点などですね。
市役所の職員というと、しっかりした人達しかいないと思われがちですが、やはり色々な人がいて色々な悩みを持っているものです。関係団体の方も市民ではありますので、そうした点を共有できたのは良かったと思います。

また、地域ブランディングについては、まず行政の独りよがりでは絶対にダメだと考えています。行政がやりたいこと・民間がやりたいことを合わせて取り組まないといけないですね。それをしていくためには「人」の連携が何よりも重要だと思います。みんな一人ひとり知識も経験も違いますから。今回のような共同で課題に取り組む研修というのは有効だと思いますね。今後は、商工会や市内の中学校など別のところとも取り組んでいくのも面白いと思います。
また、大事なのは単発で終わらせないことだと思います。継続して、緩く長く、垣根を低くして続けて定着していくこと、それが地域ブランディングにつながると考えています。

地域ブランディングの可能性を広げる「伝わる」情報発信

今回のシティプロモーション研修会は、いなべ市とモリサワがこれまで築いてきた「伝わる」情報発信の土台を、さらに発展させる取り組みとなりました。その中核にあるのが、人材育成を起点とした地域ブランディングという考え方です。

新しいブランドの立ち上げや、デザイン性の高いWebサイトの制作なども、地域ブランディングにおける重要な要素です。しかし今回の研修会では、それとは異なる新しいアプローチを実践しました。市の職員と事業者が一堂に会して学び、それぞれの立場から意見を交換することを通じて、地域ブランディングにおける発信力向上を後押ししました。

主催者である佐藤氏は、本研修会を次のように締めくくりました。

「皆さんの立場は異なりますが、送り手の独りよがりではなく、受け手に伝わる情報発信の大切さを学べたのではないでしょうか。今後はその基本と原則に自分なりの工夫を加えながら、普段の資料作りからSNSなどに至るまで、地域ブランディングにつながる情報発信を続けてほしいと思います」

また参加者からは、「伝え方を考えれば、県外や海外の方にもわかりやすく情報発信ができる可能性を感じました」という手応えを感じる声も寄せられました。本研修会を通じて共有された「伝わる」情報発信のノウハウと、官民一体で取り組む意義。それらは今後、いなべ市の地域ブランディングを支える新たな力となっていくはずです。


モリサワでは、「『伝わる』資料デザイン プログラム」として、自治体や学校、一般企業向けにも対面形式にて実施しています。「伝わる」資料デザイン プログラム研修について、詳しくご紹介しているページをぜひご覧ください。

詳細(費用、実施までの流れ、参加者の声など)についての資料は、こちらから無料でダウンロード可能です。

If you are interested in the training sessions for the "Communicative" Material Design Program or the UD fonts used in the training sessions, or if you are considering introducing or utilizing them, please feel free to ask us any questions using the form below.