interview

2025.12.17

教員と学生が「同じフォント環境」を使う効果 — 感性×実技の教育を支える「包括ライセンス」

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福岡デザイン専門学校
伊場 理事長
(left)
畑中 先生(右)

「感性」と「理性」の融合を目指す福岡デザイン専門学校では、その実践を支える共通言語として「Morisawa Fonts 教育機関プラン(包括ライセンス)」(以下、包括ライセンス)を活用いただいています。サービス開始後いち早く導入いただいた同校の伊場理事長、畑中先生に、包括ライセンス導入の理由や効果などを伺いました。

school name福岡デザイン専門学校
Academic areaイノベイティブデザイン学科(1年制)
クリエイティブデザイン学科(3年制)
– ビジュアルデザイン専攻
– 建築・インテリアデザイン専攻
– 家具・雑貨プロダクト専攻
Implementation PlanMorisawa Fonts 教育機関プラン(包括ライセンス)
What I was looking for指導の効率化、実践的な学び、学生の審美眼育成

「感性教育」と「作法(実技)教育」の必要性

Please tell us what students can learn and what is emphasized at your school.

伊場理事長 本校の創立者は、「学校は学生のためにある」という理念を徹底していました。そのため、代々一貫して学生の学びを最優先に考える教育方針をとっています。

近年ではAIやセンサーといった技術の進歩が著しいですが、私は人間の「感性」を重視しています。AIやセンサーで“感じる”ことはできても、感性と感情を結び付けられるのは人間だけだからです。作り手と受け手、その最初と最後に人間がいる限り、感性を磨く教育は欠かせないと考えています。

同時に、感性と感情の中間にある情報処理、すなわちデザインの「作法」は効率化してスピードを上げるべきだと考えています。そこで当校では、「感性教育」と「作法(実技)教育」を融合する教育を行っています。

カリキュラムの概要
  • 1年次:感性教育(五感を研ぎ澄ます感受性訓練。読書・手を使って行う感性トレーニング)
  • 2~3年次:デザインの実践教育(タイポグラフィ、レイアウトなどのグラフィックデザインの基礎~応用)
  • +1年(任意):研究・実践の深化

こうした3+1年構成のカリキュラムは専門学校では珍しいものですが、「ツールの使い方」の短期教育だけでは、学生の本質的な力にならないという考えに基づいています。

畑中先生 本校にはビジュアルデザイン専攻のほか、建築、インテリア、家具、プロダクトの専攻もあります。立体系の学生にも感性教育は重要なので、1年次の基礎プログラムで全学生を対象に実施しています。

フォント導入の転換期 — 教員と学生が同じ書体を使えるまで

フォントの導入について、これまでの経緯を教えてください。

畑中先生 20年ほど前、私が学生の頃は学校のPCにいくつかの書体が入っている程度で、個人のフォント環境は十分ではありませんでした。しかしその後、ノートPCの個人所有が前提となり、校外でも同じ書体が使えないとデザインができないため導入が進みました。また、ちょうどその頃に「MORISAWA PASSPORT」が始まり、学生一人ひとりが導入しやすくなったことが大きな転機になったと思います。

伊場理事長 グラフィックの先生からも「学生が同じ書体を使えないと指導が難しい」と言われていました。とはいえ、以前はATM(Adobe Type Manager)やプリンタフォントで1書体が高額だったので、学校全体での整備は難しかったですね。そこにMORISAWA PASSPORTが登場したことで、導入の障壁が一気に下がりました。

また当時はDTP環境も、Mac OS 9からOS X、OCF/CIDからOpenType、QuarkXPressからInDesignへと変わる転換期でした。OpenTypeとAdobeアプリの連携で文字詰めなどが進化し、教育現場でもようやく「教員と学生が同じフォントを使える」状況が整いました。

プロと同じ書体にアクセスできるモリサワの魅力

モリサワを選んだ理由と、その効果についてお聞かせください。

伊場理事長 現場のデザイナーの声を重視した結果です。学生が就職して最初に問われるのは、「文字への理解度」と「美意識・価値基準をもっているかどうか」ですので、学校はそれに耐えうる学びを提供しなければなりません。フォントは世界中から選べますが、必要な書体にすぐアクセスできる環境が重要です。モリサワはその点が優れていましたし、一括導入の利便性やコストパフォーマンスが高かったことも決め手になりました。

畑中先生 全書体を使用できる点もポイントだと思います。学生にとってプロと同じ書体が使えることは非常に重要です。フリーフォントは品質にばらつきがあるため、まずは時間をかけて作られた本物に触れてほしいと考えています。そのため1年次前期の共通授業では、基本書体と文字組のトレーニングを実施しています。「A1明朝」や「新ゴ」といったスタンダードな書体から入り、徐々に応用的なものへと広げています。

伊場理事長 デザインを判断する価値基準の一つとして、「文字が声として聞こえるか」といったことも伝えています。言い換えると、そのレイアウトや文字組が、“視覚から他の感覚に変換させる力をもっているかどうか”ということです。それはまさに、感性教育と実技教育の融合であり、デザインの強度にもつながる基準だと考えています。

「包括ライセンス」の決め手は、利用しやすい価格と導入の簡便さ

「包括ライセンス」導入の決め手は何でしょうか。

畑中先生 学生にとって価格が非常に抑えられていること、ブラウザからのアクティベーションで使い始めが簡単なこと、検索性が高いことが決め手になりました。学校側の作業は一部増えましたが、運用の負担はほとんど感じていません。

ただし今年度は、学生用メールアドレスを発行せずGmailなどで運用したため、連絡面で課題がありました。今後はアカウント設計の見直しも検討したいと考えています。

領域間の垣根をなくす「共通言語」としての価値

グラフィック領域以外での活用についてはいかがでしょうか。

伊場理事長 以前はグラフィック系の学生だけがフォントを使う時代もありました。しかし、それ以外の専攻においても、文字情報は不可欠です。例えば建築系でも、サイン計画だけではなく、発表ボードや展示物なども制作します。どれだけ設計やデザインが優れていても、その内容を伝える文字が稚拙では読んでもらえません。

畑中先生 世界的な建築家は自らグラフィックを手がける例も多くあります。だからこそ、グラフィック以外の学生も形の良い書体に触れて、審美眼を養ってほしいと思います。

伊場理事長 そういった意味でも、包括ライセンスで領域間の垣根がなくなることに大きな意義があると思います。全専攻の学生が同じ環境で学べること、つまり共通言語としてのフォント環境は非常に重要だと感じています。

Morisawa Fonts 教育機関プラン(包括ライセンス)の効果
  • 教員と学生が「同じ環境・同じ書体」を使うため、授業が同じ目線で進行
  • 豊富なファミリー書体とデザイン書体により、文字の配置・文字間・書体選択などの試行錯誤が実践的に学べる
  • プロと同じ品質のフォントに触れることで審美眼が育つ
  • 文字を「音・声として知覚できるか」を基準に作品を評価する姿勢が養われる

教育機関で協働し、地域に根差した文化圏を作りたい

Please tell us about your future prospects.

伊場理事長 文化は東京から一方的に流れてくるものではないと思います。大阪には大阪の文化があり、福岡には福岡の文化があります。それぞれの地域が、それぞれ独立したものを守りながら高め合っていくのが文化ではないでしょうか。

だからこそ、地域の教育機関が共通の環境や書体などを整えることが重要だと思います。そうした共通言語が増えれば交換授業もしやすくなりますし、より緊密な関係を築くことができます。地域のデザイナーを育て、地域のコミュニケーションを広げ、地域に根差した文化圏を作れたらと考えています。

Morisawa Fontsは、「感性教育」と「作法(実技)教育」に欠かせない共通言語です。


福岡デザイン専門学校が目指すのは、「感性」と「理性」を融合したデザイナー育成です。その理念を支える「共通言語」として、Morisawa Fonts 教育機関プラン(包括ライセンス)は欠かせません。教員と学生が同じプロの書体環境で学ぶことで、審美眼が育ち、指導の質と効率が向上しました。

これは、単にツールの提供にとどまらず、文字を「声」として捉える深い学びへと学生を導いています。今後は、この共通基盤を地域の教育機関にも広げ、地域に根差したデザイン文化圏の構築を目指す同校の挑戦から、目が離せません。デザイン教育の未来は、確かな環境と熱い理念によって切り拓かれつつあります。